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その直後、紫音は空の結界を発動させた。なぜなら、空の結界術を用いることによって、磁気を感じることができるからだ。
人の体内には微小ながら電流が流れている。それによって微小な磁場が発生する。その磁場を読み取ることによって、空の結界内に入っている人を感じることができるようだ。
紫音は、それを応用してルーレットに磁場が発生するかどうかを確かめようとしていた。
ボールが幾度もウィールの縁をまわり遠心力が弱まると下へと落ちてきた。今のところ人工的な磁場は発生していない。
だが、ボールが0に入ったかと思ったとき、紫音は人工的な磁場を感じ取った。ボールが、0スポットの底に当たり弾き飛ばされると、あっという間にレッド22に収まった。
疑う余地もなかった。間違いなく磁力が発生しボールがレッド22に吸い込まれた。完全なるイカサマだ。それを目の当たりした紫音は、すぅーと目を細めて雪麗の脳内に語りかけた。
『やっぱ、磁力を発生させよった』
『ということは、この鈴玉というディーラーは狙ったスポットにボールを入れれるということね』
『そうや。だから 雪麗の仲間が電源を落とせば勝てるっちゅうことや』
『わかったわ』
雪麗がそう言うと、ストレッチするように両手を高く上げた。プレイを続行する合図だ。それを見た赤毛の娼婦は外にいる仲間に連絡をとる。連絡方法は仲間にワンコールをするだけ。それで準備が整ったようだ。あとは、ディーラーが頭に思い浮かべた数字に賭ければ良いだけ。
「おにぃ~さん、残念だったわね」
ニパッとした笑顔を見せた《リンユー》は、紫音が賭けたゴールドチップを容赦なく回収していった。
「おいおい、俺を引き止めたいんやったら、ちょっとは楽しませてくれよ。せやないと、次のゲームで最後にするぞ」
「いや~ん、おにぃ~さんに帰られたら、鈴玉、悲しぃ~い~」
甘えるような仕草で可愛い声色を出す鈴玉。けれど、目だけは笑っていなかった。
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