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その後も、テンポよく次のゲームが始まった。
鈴玉の指先で高速回転しているボールが、まわりだしたウィールに投げ込まれた。
「プレイス ユア ベット《レイアウト上にチップを置いてください》」
紫音は迷わずブラック28とレッド12の境の線上に残りのチップをすべて賭けるとディーラーに口頭で告げた。チップの数が多すぎて枠内には入りきれなかったのだ。ゴールドチップを50枚(約7千万円)とオレンジチップを78枚(約1千117万円)。しめて約8千117万円分のチップだ。カラクリがわかった以上、雪麗も乗る気になったようだ。
これには、鈴玉も度肝を抜かされた。いや彼女だけではなく、この場にいるすべての客が驚いた。
「すげーぜ! あのにぃ~ちゃん、さっき勝ったチップ全部をスプリットベットの2点賭けで張りよったぞ」「いいぞ! 応援してるぞ!」「どうかしてるぜ、それは、自殺行為だろ」「まったくイカれた野郎だぜ」「せっかく勝った金、溝に捨てるようなもんだろ」
またしてもルーレットテーブルのまわりでは、感嘆する者や悲観する者など思いのままの声が上がっていた。
このときの鈴玉は当然ながら人一倍おののいていた。そして、鈴玉はショートの髪のセットを整えるふりをして、天井にある監視カメラを見上げていた。磁力を発生さすようにと奥の事務所にいるスタッフに合図を送ったのだ。
(嘘でしょ! 私が落とそうとしているスポットに賭けるなんて! このおにぃさん、もしかしてエスパー? いや、そんな訳ないか…じゃあ、今日はツイているってことなの……それともかなり引きが強いのかな…、まあどっちでもいいわ、スタッフに遠隔操作してもらえば入ることなんかないんだし…….。でもほんと、こんなの当てられたら、私のデヴュー戦にケチがついちゃうわ。いや、それどころかクビになっちゃうし…)
その鈴玉の心の声を聞き、紫音は胸の内でほくそえんでいた。
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