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『いや、諦めんのはまだ早い』
『もう無理よ、手は出しつくしたわ』
『まだ、手元に42万香港ドル(約800万円)が残ってる』
『だから、私の話、聞いてる?』
『ああ、心配するな』
『……』
紫音が何を言っているの呑み込めない雪麗は戸惑いを覚えた。でも、特殊な力を持つ紫音のことだ。もしかしたら他に勝てる方法を隠しているのかも知れない。
そう思った雪麗は、これから紫音がしようとすることを静観しようと心に決めた。
「おにぃーさん、今回も残念だったわね。ごめんなさい」
突然、鈴玉がしたり顔で話しかけてきた。
「ふっ、別に心にもない謝りはいらんぞ」
「私、おにぃ~さんを楽しませてあげれなかったから……フッフフ、もう今日は負け犬のように尻尾を巻いて帰りますぅ~? それとも続けますぅ~? 私はね~、さっきのディーラーさんの負けを回収したから、もう、おにぃ~さんがプレイを続けようが止めようが、どっちでもいいんですけど……。ウフッフフ」
勝ち誇った鈴玉が、悪態を吐いた。
「そっか。じゃあもう少し、遊ばしてもらおうか。──これをカラーアップしてチェンジしてくれるか?」
紫音がバッグから残りの42万香港ドル(約800万円)を取り出し、鈴玉に手渡した。
身ぐるみ剥ぐのが趣味でもある鈴玉は、満面の笑みを浮かばせた。鈴玉は、すぐさまインカムで他のスタッフらを呼び寄せ札束を数えさせる。
「では、おにぃ~さん、こちらを……ゴールドチップ5枚(1枚/約150万円)とオレンジチップ3枚(1枚/約15万円)です」
「サンキュー」
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