彼の処方箋

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 10月の半ば、久しぶりに風邪をひいて学校を休んでしまった。 「志桜里(しおり)も今年は受験生だから、自分でも体調に気をつけないとね」  模擬試験が終わっててよかった。でも、もしかしたらその疲れかもしれなかった。 熱もあったので母と小児科に行って、診察を受けた。 「ここだといつもの薬局は遠いわね。雨だし、藤原くんのところに行こうか」 その名前を聞いて、私はドキッとした。 彼の家が先代のお祖父(じい)さんから薬局を営んでいるのは、大人の話を聞いて知っていた。 小学校からずっと同じ学校だった藤原くんは、体が弱いみたいでよく学校を休んでいた。 中学生になって初めて同じクラスになって、今も席は前と後ろの並びだけど、彼は相変わらず欠席が多いからあまり話をする機会もなかった。 たまに来てもずっと本を読んでいたり、すぐに保健室に行ってしまったりしている。 小学校の時は「可愛い」雰囲気があって女の子みたいだと思っていたけど、中学生になったら少し背が伸びて、穏やかな瞳はそのままに、端正な顔立ちになってきた。 話し方も物静かで、他の男子とは全然違う。 乱暴な言葉づかいもしないし、接点は少なくても皆にとても優しかった。 クラスの女子の何人かは密かに彼に憧れを抱くようになっていて、私もそのうちの一人だった。
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