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微妙なお年頃
ケンとシオは、両親が望んだように、シオの勤務時間が終ると、二人仲良く、シオは夕食を作りながら、ケンは隣りで手伝いながら佐藤家で過した。
ケンは日本語を忘れるくらい向こうの国になじんでいて、時々、ウルギーの方の言葉が出てしまう。無理もない。日本語を話さずに15年間生きてきたのだ。
そんな中でも、二人は昔からの中の良さを取り戻し、年齢のことも考えて、結婚を自然と口にするまでに仲が戻っていた。
両親ももちろん、賛成である。37歳という微妙なお年頃になってしまった娘のシオだが、今の医療だったらまだ子供も望める年齢だ。
二人が望むのならば子供を作って、ずっと手入れをしてきた中川家に住めばよい。何だったら、両家の敷地をつないで、二世帯住宅にする手もある。
海外の悲しい内戦に翻弄された二人だったが、これからは、もう幸せな事だけを考えて過ごしてほしい。と、自分たちもまだまだ元気な両親は、ケンが帰ってきたことですべて丸く収まった可愛い娘の幸せを切に願っている。
もちろん、二人は自分たちの子供を作る事には前向きだった。
亡くなってしまったケンのご両親も喜んでくれることだろう。
ただ、ケンは結局学歴が中学校中退になってしまっていることをとても気にしていた。これは、自分たちに子どもが生まれたときに、父親が中学校中退ではいじめられるかもしれないと心配しての事だった。
そこで、シオは役所に働きかけて、海外にいたという事情も含め、中学校は卒業した事にしてもらえた。
そして、ケンは結婚後、シオの通っていた高校に編入し、20歳年下の子供達と一緒に勉強している。何歳になっても本人がその気になればやり直すことはできるのだ。ケンは昔を取り戻すように軽音楽部にも入って、息子のような年齢の子供達と一緒に部活動をも楽しんでいるのだ。
辛い運命を背負わされても、前向きに生きて行く二人にはきっと明るい未来が待っている事だろう。
これから幸せな家庭を築いていくであろうこの二人に幸あらんことを願うばかりである。
【了】
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