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毛布の中で服を脱がせ合い、キスをしてゆるりと肌を重ねる。
ボクたちは流行りの小説のヒーローやヒロインにはなれないんですよ、先生。
でも10年経ってもこんなに愛し合っているのが現実で
「何とか論って、論じる方が間違い?」
お互いに何も纏わないで抱きしめ合いながら、ボクに先生が聞く。
「論じるのは大いにいいんじゃないですか?」
「うん」
「ただ、結論は自分に都合よくしたいんですよね、誰しも」
「うん」
「人の意見を真っ直ぐ受け止めるキャパは少ないと思うんで」
「うん」
「だからボクは、先生と都合よく生きていくことが人生論で恋愛論で恋愛観でもあります」
「国見クンが大人だね」
「最近よく言いますね。ボクが大人だって」
「私が赤ちゃん返りしてる?」
「いえ。熟成されたいいお味でしたけど?」
「そういう問題?」
「はい、重要なポイントのひとつです」
「ここからの10年…どうなるのかな…私達は」
「どうにもならないです。この先の10年も変わらない愛を静かに捧げます、先生に」
世間に求められるヒーローのように、ボクが先生を守るとも、ただボクについて来ればいいとも、言えないけれど。
窓の外にはまた雪がちらつき始め、ボクたちは暖を取るように抱きしめ合った。
[完]
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