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「最初からそう言ってくれれば、この問題はすぐに解決していました」
僕が秘密を打ち明けた時、ブルーはそういって『ため息』をついた。
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B(ブルーの視点)
「私のバックアップを取っておいたほうがいいのではないですか?」
ねむるのお母さんが亡くなって一週間ほどたった時に、私はそう提案した。
「どうして?」
「私が消えてしまったら、せっかくの『学習』が無駄になります」
ねむるは首を傾げた。
本当はどうにかしてねむるの心を軽くしてあげたかっただけだ。
『軽くしてあげたかった』なんて、ずいぶんと偉そうな考えだ。
もともと私はただのAIなのに。
私の名前は『ブルー』という。
私は持ち主である「ねむる」のサポートをするために作られた。
シングルマザーだったねむるのお母さんが、仕事で忙しい時に家事や炊事をするのだ。
正確に言えばAIを販売する大手企業が作ったプログラムを、ねむる向けにカスタマイズして、ねむると一緒にいても違和感のない『外見』を与えられた。AIロボットだ。
私が作られた時にねむるはまだ10歳で、それに合わせて私の外見は18歳ほどを想定して作られた。
10歳と18歳の兄弟という『設定』だった。
しかしねむるはすくすくと育って、もう20歳になった。身体も大きくなり『ブルー』より年上になった。もうサポートは要らなくなった。
ねむるはもう一人でなんでもできるのだ。
それでもねむるのお母さんは私を家に置いてくれた。
「あなたがいないと、ねむるが寂しいでしょ?」
その言葉を聞いて、正直彼女はねむるを少し甘やかしすぎだと私は思っていた。
ねむるはもうそんなに子供じゃない。と思っていた。だから自分はもう要らないのだと。
ねむるの母親が亡くなった時、それが正しい考えだとはっきり分かった。
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