昨日の『ブルー』と今日のブルー

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「最初からそう言ってくれれば、この問題はすぐに解決していました」 僕が秘密を打ち明けた時、ブルーはそういって『ため息』をついた。 __________________ B(ブルーの視点) 「私のバックアップを取っておいたほうがいいのではないですか?」 ねむるのお母さんが亡くなって一週間ほどたった時に、私はそう提案した。 「どうして?」 「私が消えてしまったら、せっかくの『学習』が無駄になります」 ねむるは首を傾げた。 本当はどうにかしてねむるの心を軽くしてあげたかっただけだ。 『軽くしてあげたかった』なんて、ずいぶんと偉そうな考えだ。 もともと私はただのAIなのに。 私の名前は『ブルー』という。 私は持ち主である「ねむる」のサポートをするために作られた。 シングルマザーだったねむるのお母さんが、仕事で忙しい時に家事や炊事をするのだ。 正確に言えばAIを販売する大手企業が作ったプログラムを、ねむる向けにカスタマイズして、ねむると一緒にいても違和感のない『外見』を与えられた。AIロボットだ。 私が作られた時にねむるはまだ10歳で、それに合わせて私の外見は18歳ほどを想定して作られた。 10歳と18歳の兄弟という『設定』だった。 しかしねむるはすくすくと育って、もう20歳になった。身体も大きくなり『ブルー』より年上になった。もうサポートは要らなくなった。 ねむるはもう一人でなんでもできるのだ。 それでもねむるのお母さんは私を家に置いてくれた。 「あなたがいないと、ねむるが寂しいでしょ?」 その言葉を聞いて、正直彼女はねむるを少し甘やかしすぎだと私は思っていた。 ねむるはもうそんなに子供じゃない。と思っていた。だから自分はもう要らないのだと。 ねむるの母親が亡くなった時、それが正しい考えだとはっきり分かった。
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