君と奏でるノクターン

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*  今日の授業も退屈だ。外はいい天気だというのに、どうして僕らは席についてつまらない話を聞かなければならないのだろうか。居眠りをすれば叱られる。居眠りさせたくないなら、面白い話をしてほしいものだ。 *  昔の人なのに、感覚は今の私たちと変わらないんだと思うと、勝手に親近感が湧いてくる。胸ポケットに入っていたお気に入りのオレンジ色のボールペンでその頁に書き込みをする。『居眠りさせたくないなら、面白い話をしてほしいものだ』という部分に波線を引き、女の子が拍手しているイラストを描き、「天才! 私も同意見です」と喋らせる。 「ま、こんなの書いたところで見てもらえないんだけどね」  ボールペンをしまいながら独り言ちた。もう一度日記の文字を指で触れながら読む。すごく綺麗な字だと思う。どんな人が書いたのだろう。しばらく夢想して、ぱたんと日記を閉じた。どうせ会えないし、考えるだけ無駄だ。日記をロッカーの上に戻し、教室を出た。
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