君と奏でるノクターン

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 午後の授業はやっぱり退屈で、強烈な眠気が襲ってくる。今は歴史の授業。先生はただ教科書の文字の羅列を読み上げるだけ。先生、それなら自習で良くないですか。もっと興味を引くような豆知識とかを間に挟んでくれたらいいのに。  日記の彼もこんなことを考えながら授業を受けていたのだろうか。歴史上の人物よりも彼がどんな人生を送ったのかが気になってしまう。退屈な授業をどう乗り越え、どんな大人になって、どんな生涯を終えたのだろう。 「それじゃあ今日の授業はここまで」  先生のその声で我に返る。彼のおかげで居眠りしないで乗り切ることができた。これはすごいことだ。もっと彼のことを知りたい。彼がもしクラスメイトなら、きっと私たちは良い友達になれると思うのに。  そう考えてため息を吐き出した。今のクラスにはちっとも馴染めていない。入学式前日に交通事故に遭った私は、二週間ほど入院する羽目になった。退院後に初登校したときには、すでに出来上がってしまった派閥のどこにも所属することができず、それ以来ずっとぼっちだ。  授業が終わるとスクールバッグを肩にかけ、いつものように旧校舎へと向かう。暇つぶしに興味本位で忍び込んだのがきっかけだった。噂に聞くほどホラーな感じは漂っていないし、ちゃんと音の出るピアノがあったのが嬉しくて、いつしか通いつめるようになっていた。実家にあったピアノは、引っ越しのときに手放してしまったから。
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