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書いてしまってから赤面する。会ったこともないのに告白するだなんて、気持ち悪いと思われたかもしれない。慌てて塗りつぶそうともう一度ペンを握ると、私が書いたすぐ下に『僕も』という文字が書き込まれた。息を呑んで、その言葉の続きを待つ。
*
僕も美命に会いたい。
朔の日の伝説は知っているかい?
僕の世界と君の世界がつながるらしいんだ。
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朔の日の伝説。この学校にまつわる噂のことだ。行方不明になった生徒は、過去の世界に行ってしまったということ?
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朔の日なら、会えるの?
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日記に書き込んでから月の周期を調べる。次の朔は……明日だ。
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僕も詳しくは知らないけれど、たぶん。
僕は君に会いたい。
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運が書いた文字を何度も読み返す。会いたいと言ってもらえるのが嬉しい反面、怖いという気持ちもあった。対面して、想像と違うと拒絶されてしまったら? 過去から戻れなくなってしまったら? でも、私はどうせひとりぼっちだ。この時代に残るより、運のいる時代に行ったほうがいいのかもしれない。「明日、会えるのを楽しみにしてる」と日記に書きこんで、教室を出た。
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