君と奏でるノクターン

8/14

48人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 書いてしまってから赤面する。会ったこともないのに告白するだなんて、気持ち悪いと思われたかもしれない。慌てて塗りつぶそうともう一度ペンを握ると、私が書いたすぐ下に『僕も』という文字が書き込まれた。息を呑んで、その言葉の続きを待つ。 *  僕も美命に会いたい。  朔の日の伝説は知っているかい?  僕の世界と君の世界がつながるらしいんだ。 *  朔の日の伝説。この学校にまつわる噂のことだ。行方不明になった生徒は、過去の世界に行ってしまったということ? *  朔の日なら、会えるの? *  日記に書き込んでから月の周期を調べる。次の朔は……明日だ。 *  僕も詳しくは知らないけれど、たぶん。  僕は君に会いたい。 *  運が書いた文字を何度も読み返す。会いたいと言ってもらえるのが嬉しい反面、怖いという気持ちもあった。対面して、想像と違うと拒絶されてしまったら? 過去から戻れなくなってしまったら? でも、私はどうせひとりぼっちだ。この時代に残るより、運のいる時代に行ったほうがいいのかもしれない。「明日、会えるのを楽しみにしてる」と日記に書きこんで、教室を出た。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加