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「佐倉くん、今いいかな?」
お姉様に文句&転校の意志をどうお伝えすべきか考えようとしたら隣の人に話しかけられた。背ぇたっか。さっぱり整えられた黒髪はスポーツマンって感じ。こなれた感じで制服も崩されててこれまたイケメンですこと。朝から何人イケメンを見てるんだろうか、恐縮してしまうわほんと
「…イイデスケド」
恐縮以前にコミュ障でした。顔面いいしなんか爽やかだし陽キャオーラ出まくってるな
「佐倉くんって大乱闘やってたりする?」
「やってますけど」
「本当に?よかったら今度、俺に教えてくれない?友だちがめちゃくちゃゲームうまくてさ、いつも勝てないんだよ」
教える?俺が?ゲームを?このイケメンに?
「ははは!超嫌そうな顔してるね!」
「?顔隠れてるからわからなくないですか?」
すごいなこの人。自分で言うのもなんだけど顔のほとんどが隠れてるから学生でなければ感情が読めない不審者ですよ俺
「んー雰囲気?でわかるよ。けっこうわかりやすいと思うけどな。あ、タメ口でいいよ」
「…わかった」
そんなもんか?
「ところでどう?」
「やだ」
「だめかー」
当たり前だろめんどいし、ところで
「…ごめん、名前なんだっけ?」
「自己紹介したのに!?」
まぁ聞いてなかったしね。クラスの人の名前1人も覚えてない。あ、担任もだ。あの担任なんて名前だっけ…
目の前でしょぼんとしてるお隣さんを見ると罪悪感を感じなくもないが仕方ない。クラスの人と関わるつもりが全くなかったから。中学時代はほとんど学校の人と話さなかったし、そもそもクラスメイトとかにも遠巻きにされてたしな
「えー、ショックだな…もっかい自己紹介するから覚えてくれるとうれしいな」
「…努力はする」
「努力って…ま、いいか、久瀬爽汰って言います。趣味は水泳かな。中等部からずっと水泳部だし」
そう言ってわざわざスマホで漢字を打って見せてくれた。「そうた」の「そう」は爽やかの「爽」ですか。名は体を表すって本当だったんだな。いや嘘だわ俺灯だけどべつに明るくないし
そして水泳。これまた爽やかそうな。姉ちゃんがまこはるさんってキャラだったかが好きで水泳が義務教育化されたから一通り泳げはするけど得意でも好きでもないからな
「すごいなぁ」
「……え?」
「あ、いやなんでも」
素直にすごいと思ったことが口からこぼれでてしまってなんか恥ずかしい
久瀬がなんか口をモニョモニョさせている。キモいですねすみません
咳払いをひとつしてモニョモニョが終わり、また爽やかオーラが出た
「気が変わったらゲーム教えてよ。もしくは見てゲームスキル盗むよ」
「え、やめて」
嫌がってるのに久瀬は笑っている。いやほんとにやめろよ?
「ところで佐倉くんってもう部活決めた?特待生なら部活免除もできるけど」
つまり特待生でなければ部活に入らなきゃいけないのか。めんどくさ。ほぼ帰宅部の部活とかないかな?探すのすらめんどくさそうだけど
「その特待生とかってどんな基準?」
「んー中等部三年の成績が元になってたと思う。佐倉くんは高等部からの編入だから編入試験じゃないかな?」
「編入試験…」
あれかー。英語自信ないからなー。他は簡単だったけどあんな簡単なので特待生決めていいの?高等部編入生だけ特待生多くならない?
「あっ心配しなくても佐倉くんは特待生だから」
黙っているのを心配していると勘違いしたのか久瀬が教えてくれた。
…って、ん?
「俺、特待生なの?」
「え、うん」
「なんで久瀬くんがわかるの?」
「入学式のレクリエーションで特待生は名前呼ばれたでしょ?佐倉くんも呼ばれてたと思うけど…」
「そだっけ?」
王道学園に入学してしまったショックで意識飛ばしてたからな
「それに、学生証に紫色の額縁みたいなのがついてたでしょ?」
「学生証?」
「それも!?」
何から何まですいません。教えてください
「入学式寝てたの?事前に届いたスマートウォッチあるよね?あれが学生証とか寮の鍵とかになってるんだよ。他にも地図にもなったり色々機能あるけど」
「へー」
苦笑しながらも教えてくれる久瀬に感謝しながら一応持ってきていたスマートウォッチを操作し、学生証を表示する。確かに紫色の額縁が付いていた。一般生徒には縁がなくて、紫の他には黒があるんだとか。なんの色か知らないけど
随分とハイテクだな。壊したらどうなるんだろ
「ねぇ、これって壊したらどうなる?」
「データが飛ばなきゃ修理でお金がかかって、データが飛んだりスマートウォッチそのものを無くしたりすると退学処分だね」
「え」
何その処分クッソ重い。姉ちゃんに殺されるから絶対壊さないようにしよう。
「ありがと、色々。教えてくれて」
「全然いいよ。あ、お礼にゲーム教えてくれない?」
「それはやだ」
「強情だなぁ」
めんどいからそれだけは勘弁
「佐倉くん、今日はもう授業ないし、一緒に寮に行かない?場所わかんないでしょ?」
「…あざす」
この学校広すぎて全然道わかってないから助かる。助かるがしかし…
「やっぱいいよ。俺、担任のとこ行かなくちゃいけないし」
「あ、そうか。さっき呼ばれてたもんね。じゃあ待つよ」
どこまでイケメンなんだこいつ。なんかもう申し訳ない。出会ってまだ10分とかだよ?
「悪いしいいよ」
「っていうか数学準備室まで案内するよ。で、待ってる。道迷ったら大変でしょ?」
確かに困る。認めたくないけど姉ちゃん曰く俺は方向音痴らしい
「……よろしくお願いします」
「うん、任せて」
「もう一個お願いしていい?」
「ん?何?」
爽やかスマイルで俺を待ってくれる。イケメン力垂れ流しすぎでは?こいつイメージボーイにして商品売ったらなんでも売れそう。
なんにしろ久瀬が優しいやつでよかった
「あのさ、担任の名前なんだっけ」
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