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『寮監さんと同室のうちひとりに会いました』っと。これでとりあえずミッション完了。うわ既読はっや
『2人の写真求ム。お願いしてみて』
え……なぜ?でも断ったら鬼電かかってくるんだろうな
「あのすみません。姉がおふたりの写真を送ってくれと申しているんですが、写真撮って送ってもいいですか」
「え、なんで俺たちの写真?」
久瀬にもっともすぎる言葉をもらうが俺には答えようがない
「俺にもわからないんだけど、昔から変なこと言う姉なんだよね。ごめん」
「俺は別にいいけど」
久瀬は了承してくれて仙波さんのほうを見る。仙波さんは優しい笑顔で答えてくれた
「きっとお姉さんは佐倉くんのことが心配なんですよ。私も大丈夫ですよ」
「すみません。ありがとうございます」
いや絶対俺のためではないですよ。という言葉は飲み込んでお礼を言う
無事了承してもらえたので一人ずつ写真を撮って姉ちゃんに送信した。すぐに既読がついて、待機してたんだろうなっと思ったとたん「鬼」から電話がかかってきた。仙波さんが出てもいいと言ってくれたのでまたお礼しつつ応答ボタンを押す
『ふたりともイケメンだし同室の子に関しては絶っ対、爽やか枠の子じゃない!!ちょっと腹黒そうな寮監とか王道にいないし非王道に進んでる!?よくやった灯!!えらい!!!そのままがんばれ!突っ走れ非王道総受けコース!!!』
「うるさいよ姉ちゃん」
『あ、ごめん』
堰を切ったように言われても圧倒されるだけでなにも言えない。というかなにを褒められていてなにを頑張ればいいのかもわからない
「それで、わざわざ電話してきたのはなに」
『あーそれね。2人ともう1人の同室の子にはマスク外した姿見せてもいいわよ。いっしょに生活するうえで不便でしょ。あと寮監さんはなにかあったときのためにね』
部屋では外す気満々だったんだけどまさかの許可が必要だったのか……。まぁ今許可もらえたしいいとして
「それだけ?なら切るよ」
『待てコラ。今外しなさい。でもってその様子をビデオ通話にして見せなさい。あ、メガネは絶対に外しちゃだめよ』
「え、なんで」
『いいからやれ♡』
「はい……」
これまた意味の分からない要望だが逆らえない俺はやるしかない。ビデオ通話に切り替えてカメラを外向きにする。久瀬が怪訝そうにこちらを見てきて、今から醜い顔を見せることに罪悪感を覚えるが仕方ない。犠牲になってくれ
ゆっくりとマスクを外して久瀬と仙波さんのいる方向を見る。担任に見せた時のように前髪も顔にかからないようにずらした。カメラを二人に向けることも忘れない
俺の顔を見た途端二人はピシリと固まってしまった。いやほんとすいません。姉ちゃんは姉ちゃんでずっとなんかバンバン音聞こえるし
しばらくそのままにしておいたら奥の部屋から電子音が聞こえてきた。鍵の登録終わったのかな
電子音が鳴り続けていても二人とも動かない
電子音と携帯からなにかを叩いているような音だけが鳴り続ける。さすがに気まずいんですけど。それにそこまで固まられるとやっぱりショックなんですけど
ピピッピピッピピッピピッピピッピピッ
『バンッバンッバンッバンッバキッドサッ いった!!!』
姉ちゃん大丈夫か?なんかすごい音した
姉ちゃんの叫びでハッとした二人はものすごく顔を赤らめた。うん二人も大丈夫?醜いもの見た怒りかな
心配していたら目の前が急に暗くなった。そして苦しい
端的にいうと抱きしめられていた。目の前にある首元にネクタイっぽいのが見えるから久瀬かな。スマホからは姉ちゃんの声にならない声が聞こえてきたのでそっと通話を終了した。ていうか背ぇ高いと思ってたけどここまで身長差あったのか……いや、俺もまだ伸びてるし!たぶん
……いつまでこの体制なんだろうか。いい加減ぎゅうぎゅうされるの苦しいんだが。あ、今度は撫でられ始めた。うわ撫でるのうまいな、寝そう。……ん?なんで顎持つ?
久瀬の体温となでなででうとうとして体重を預け始めたあたりでがばっと体を引きはがされ、びっくりして目が覚めた。俺と久瀬を引き離した正体は仙波さんで、なんだか少しゾクッとするような笑顔を久瀬に向けていた。
「久瀬くん、佐倉くんが苦しそうだよ?やめようか?」
「あ、はい」
久瀬は自分がやったことに驚いているようで少し呆然としていた。一番驚いたの俺ですからね?
「佐倉くんも、あんまり人に体を触ることを許したらダメだよ?」
「……はい」
べつに許したわけじゃないのに。少し不服に思いながらも返事をする。なんとなくしなければいけない気がした。姉ちゃんと同じものを感じる
「そんな顔してもダメなものはダメ。その顔外でしたらダメだからね」
なんか同じようなことさっきも言われたんですけどどういう顔のことですか
「それじゃ、学生証を取ってくるけど、くれぐれも近づきすぎないようにね」
仙波さんはそう言って奥の部屋へ行ってしまった。マスクをつけながらチラリと久瀬のほうを見ると申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた
「佐倉くんごめんね。急にあんなことして」
「べつにいいよ。俺こそとんだ小目汚しを」
「は?」
「え?」
「…………まぁいいか。ほんとごめんね。自分でもわからないんだけどなんか体が勝手に動いてて」
まぁいいかまでの間はなにこわ
自分でもわからないとは。一刻も早くこの顔を視界に入らないところにやりたかったとか?
「大丈夫だから気にしないで。俺も気にしてないし」
「気にしてないのか…」
ボソッとなにかを言っていてわからなかったので聞こうとしたら仙波さんが戻ってきた
「おまたせ。鍵の登録は済んだからもうこれをつかって部屋に入れるよ。荷物はもう運んであるからね」
学生証を渡されてなくさないようにすぐに腕につける。あんまり腕時計とかをつけたことがなくて手間取っていると仙波さんが手伝ってくれた。
「ありがとうございます」
「気にしないで。なにか困ったことがあったらいつでもおいで」
そう言って俺の頭に手をのせポンポンと撫でてくれた。みんな撫でるの好きだな
優しい言葉と手つきがなんだか懐かしくて微笑み、またお礼を言った
俺が礼を言っている隣で久瀬が仙波さんを睨んでいることに気づかずに
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