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「救急車が来るまで、ワカナを手当てしろ!誰か看護の経験者は居ないのか!」
「ジミー、皆んな歌劇音楽学校出身だから居ません。」
「島崎、いませんじゃないだろ!
アルゼンチンの人達にも聞け!」
「は、はい。」
「取り敢えず、観客は待っている。
この事は観客に言わず、皆んなをステージに向かわせろ!」
「私、行かない!
若菜に付いてたい!」
「アカネは舞台に行かないと……
分かった。
急いで若菜の所に行きなさい!
後は、私達に任して。」
「ありがとう。ジミー・ブラウン。」
「ジミー大丈夫ですか?
最後の挨拶、歌劇Y&Aが居なくて……」
「ワカナは、どうやってステージに立てるんだ!
そして、動揺しているアカネにステージに立たせるのは酷すぎる。
福岡歌劇団の仲間達も動揺が有ると思うが彼女達はプロだ。
舞台挨拶が終わったら、観客にワカナの状況を報告しよう。
観客の中にワカナを射った犯人が居るかも知れない。
入り口、出口、関係者の出口全て、通行止めにしろ!
観客を外に出すな!」
「ジミー、さすがだ!
警察が来る前に的確な指示だよ。」
「無駄口はいい!
早く皆んなに伝えなさい。」
「は、はい。」
「若菜……」
そこに倒れていたのは、床面が真っ赤に染まって倒れている若菜の姿だった。
アルゼンチンの三人が若菜の応急処置を行なっていた。
スペイン語の通訳の人も駆けていた。
「若菜、若菜、若菜、大丈夫?」
【非常に危険ですので触らないで下さい。】
若菜は振り絞って喋った。
「私達、やり遂げたね……
もう、悔いは無いよ。
有るなら、ナベちゃんの事だけが心配なだけかな……
茜、楽しかったね!
あなたが居たから私は、成長出来た。
かすみ草の力を借りなくても……
何か、私、予想してたの……
こうなりそうな予感が……
だから、今までで最高の演技が出来た。
天国に行けるかな?
真っ先に逢いたいのは、
おばあちゃんかな……
沙月かな…
早く二人に逢いたい。
茜、私、あなたに出会えて良かった。
ありがとう……
茜は、ステージに戻って……
若菜は、右手を差し出して茜と手と手を握り締め若菜は、息を引き取った……
「若菜!若菜!若菜…」
渡辺若菜(二六歳)スペイン、ブエノスアイレスの地で短い人生を終えた。
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