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「ユキは?参加するん?」
「おう。肉という肉を食らいまくる」
「BBQって結局言うほど食べられへんやんな?焼きそばとか絶対余るやろ」
「やから、城山先輩が焼きそばは一番最初に調理する言うとったで。女子のために、スモアも作る言うてたな」
「スモアって、マシュマロ焼いてチョコレートとかギュッてするやつ?」
「そうそう。城山先輩が言うてた」
「苦手や、言うて結構喋っとるやん」
「喋った結果、苦手や思うてん」
「あ、そ」
「なあ、何着てく?」
「女子か。普通に、Tシャツとパンツで行くと思うで。あと長袖シャツも持っていくかな。虫さされたら嫌やし」
「え、俺普通にタンクトップと短パンで行く気満々やってんけど」
「家から?」
「当たり前やん」
「絶対近づきたくないわ」
「なんでや。俺、けっこう胸筋あるで」
「余計嫌やわ」
納得いかなそうな顔で、ユキが自分の胸筋やら上腕筋やらを確かめている。
「なあ、お前料理する?」
「人並みには」
「絶対、俺ら3年が買い出し組やで。きっと運転も俺らやんな?車何台で行くんやろ」
「2、3台あれば足りるんちゃう?」
「普段、威張ってるんやから、こういうときこそ城山先輩が動いてくれたらええねんけどな、きっと手配や予約も俺ら3年やで」
「西野がそういうの詳しいから、頼んでみるわ」
「おお、やっぱ頼りになるな、西野」
「さっきまで忘れとったやんけ」
ハッ、と口元を引き攣らせながら鼻で笑った。
「まあ、西野に頼むにしても、アイツ1人に任せるわけにはいかんから、俺もなんかしようとは思ってるけど」
「そら、もちろん、俺も」
「おお、頼むわ」
「おう応援しとる」
「応援かい」
後日西野に相談すると、思った通りはりきっていろいろ仕切ってくれて、準備ははかどった。もちろん城山先輩は俺ら年にまかせっきりで、なぜか待ち合わせ場所と時間だけは偉そうに指定してきただけやった。
そして当日。
俺と西野、同じく3年の清原の3人で車を出し、参加メンバーがそれぞれの車に乗り込んだ。なぜか当然のようにユキが俺の車の助手席に座り、ダッシュボードの中にあった地図を広げ始めた。
「それ、いつの地図?」
「ん?2017年て書いてあるな」
「ナビ使うから、見んでええよ」
「いや、俺が地図見るの好きやねん。どうぞ勝手に運転したって」
「なんのための助手席やねん」
大学に入学してからユキと出会って、もう何度目かも分からないため息をついた。そんな俺のことはおかまいなしに、ユキは棒付きキャンディーを口に入れながら地図を広げ、飽きたらスマホを取り出し、眠くなったら寝て、とにかく自由に目的地までの時間を過ごした。
ユキだけでなく、後部座席のメンツが全員眠りの世界に入り込んだところで、車はようやく目的地のキャンプ場に到着した。
車を駐車場に止め、ドアを開けた音でほぼ全員が目を覚まし、荷下ろしに参加してくれた。「ほぼ」に漏れたユキを叩き起こし、無理やり車から降ろす。本当は口に残った棒付きキャンディーの先を鼻の穴に入れたろか、と思ったけれどさすがにそれは危険なのでやめておいた。
配備されているテーブルが丈夫だったのが救いで、俺はいつの間にか肉と野菜を切る係りになっていた。焼き加減は好みがあるし、それぞれの好みに合わせていたらキリがない。・・・なんて思いながら網の方を見ると、城山先輩が問答無用で焼け焦げた野菜と肉たちを参加メンバーの皿に置いていく姿が見えた。
「はぁー、ホンマに暴君やな、城山先輩」
両手に皿を抱えたユキが呆れた顔でやってきた。
「お前、さっきから食ってるだけやん」
「あ、そういうこと言うねんな。せっかくお前の分まで肉持ってきたのに」
「どうせ焦げてるのばっかりやろ」
「どうせとか言うなアホ。ホレ、あーん」
伸びてくる箸を疑いつつ、口を開けると、意外にもすんなり焼けた肉が口の中に入ってきた。
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