Apoptosis

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「・・・辛!!お前、これ塩かけすぎやで」 思わず咳き込みそうになる。わざとか、と思いユキを睨むと、心外だ、という顔をされた。 「ええー?俺いつもこれくらい塩かけんねんけど・・・辛!!!おぇ」 自分の分の肉を口に入れた瞬間、渋い顔をした。 「城山先輩、下味つけてから焼いたんちゃう?」 「あのゴリラ、そういうところだけはしっかりやってんな・・・うええ、辛い。水、水・・・」 「あ、ユキ、俺にも」 「はいよぉ」 少し離れたクーラーBOXから、あっと言う間に戻ってきたユキはゴクゴクとペットボトルの水を豪快に飲んでいて、半分くらい残った水を当然のように「ホイ」と渡してきた。 飲みかけやん、とげんなりしながらもそれを受け取り、飲み干した水はまだちょっと冷えていた。 夜。なんだか騒がしいな、とみんなが集まっているテントに向かうと、風呂問題で揉めていた。 近くにあったはずの風呂が、設備点検のため休館日であることをネット情報で見落とした、と西野がみんなに謝っていた。 「マジかよ、昼間思いっきり川の中入ったからシャワー浴びたかったのに」 「私も、お風呂入れるって聞いたから参加したのに。こんなんだったら来なかった!」 「まあまあ、1日くらい風呂なんて入らなくてもさ、人間死なないやん?」 「そりゃ、雪平は慣れてるだろうけどさあ」 「・・・なんやねん、人を縄文人みたいに」 「似たようなもんやろ」 「あ?・・・お前は、どないすんねん」 「俺はボディペーパー多めに持ってきてるし。明日の朝帰ったら駅近の銭湯寄って家帰るよ」 「・・・俺ら、心の友やんな?」 「は?どの辺が?」 「頼む、俺にもボディペーパー分けてくれ!」 「・・・はいはい」 「よっしゃ、俺もそのコースで行くわ」 明日の銭湯までコイツと一緒か、とまたため息が出た。 専用のゴミ置き場があることは幸いだった。燃えるゴミと燃えないゴミを分けるのは言うまでもなく俺ら3年で。1、2年生はもともと参加人数が少ないことと、〝一番動くのは3年〟という謎の伝統ルールがあるので申し訳ない、という顔をしつつ、俺とユキ、西野の3人でゴミ捨て、片づけ、大体の寝床の準備を眺めていた。 「女子と男子でテントは2つずつ。1つは自由、2つは先に寝る人用。最終的にはだいたい均等になるように別れて寝て。女子は外に出るときは必ず男チームに声かけて。トイレとか言いづらいときは女性3人以上でね。それでも各々、スマホは絶対持ち歩いて。どんな形でも、絶対に1人はならないこと」 西野が大声で参加メンツに声をかける。分かっているのか分かってないのか、曖昧な返事と元気な返事が混ざり合う。たぶん、後者はユキやと思う。 「ユキ、これ先に渡しとくわ」 「ん?」 ユキにボディペーパーを先に投げて渡した。 「俺、たぶん先に寝ると思う。明日もたぶん運転やし」 「ああ、そうやんな」 「〝帰りは俺が運転する〟とか、嘘でも言わんかい」 「俺、ペーパードライバーやもん。免許取ってから1度も乗ってへん」 「あ、そ」 軽く荷物を持って就寝用のテントに向かうと、俺以外のほとんどが川沿いを散歩したり、呑みなおしたり花火をしたりするようだった。さすがにそこまでの始末は、楽しんだメンツでやればいいと思う。 朝4時起きで車を出して、飲酒もそこそこに、ほぼすべての準備から片づけを担当し、仮眠無しでここまで起きていられた自分を褒めてやりたい。欠伸を噛み殺しながらテントに入り、一番端を陣取る。眼鏡を枕元に置き、ピローミストをスプレーした。明日は帰るだけ。朝食は全員で途中のサービスエリアで地元の名物を食べよう、という話になっている。
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