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「なあ、呪いの村って知ってるか?」  従兄弟の智樹は、遠路遥々泊まりに来てやった僕に、物騒な話を始めた。 「いいよ、そういう話。行かなきゃいいだけだろ」  とんでもない提案がされるんじゃないかと勘繰っていると、智樹はにやりと微笑んで言った。 「勿論、行くもんか」  ほっとしたのも束の間だった。 「その場所を調べたんだ」  と、スマホの画面を僕に突き付けてきた。咄嗟にそっぽを向く。 「学校で流行ってんだよ。今友達から、これじゃないかって送られてきたんだ」  それで智樹は、大好きなゲームもほったらかして、一日中スマホとにらめっこしていたのか。 「現地に行かなくたって、スマホで行ける時代だからなー」  にまにましてスマホをスクロールする智樹に、僕は馬鹿らしくなって、「もう寝るから」とだけ吐き、毛布に包まった。  翌日、家中を駆け回る騒々しい足音で目が覚めた。おばさんたちが「智樹がいなくなった」と叫んでいた。  それ以来、智樹は戻ってこなかった。  嬉々として呪いの村を探す智樹の背中が、ずっと記憶にこびりついていた。その行為とこの事件の因果関係を考えずにはいられなかった。  そんなある日、僕のスマホに、ある場所の位置情報が送られてきた。  送り主は、智樹だった。  返信しようとした指は、驚いた拍子にか、画面を滑ってマップアプリを開いてしまう。  画面に映し出されたのは、人一人として見当たらない、閑散とした村。建物が奇妙な配置で並んでいる。  僕はその建物の並びに沿って、ゆっくりと画面を撫でた。まるで僕自身がこの場所を歩いているかのように、画面は村の中を徘徊する。  その時、目の前の建物に、人影が見えた気がして、立ち止まった。来た道を、そっと引き返す。  建物の窓の傍に、人が立っていた。こちらを見つめる虚ろなその顔は、間違いなく智樹だった。  よく見ようと、僕は画像を拡大する。  僕の親指と人差し指の間で、智樹は、画面の外の僕を真っ直ぐに指差していた。
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