第二章 真夏のかき氷

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[冴島 里依] 「だーー、もう。だから海は苦手なんだって!」 「私といれば大丈夫ですって! 足とかちょーっと浸かるぐらいで良いですから!」  私は嫌そうな顔をする真さんを無理矢理波打ち際に連れて来ます。しかし、あと少しで海水に触れるというところで頑なに足を止めるのです。 (これは完全に水が怖いときの犬!)  付けてもいない首輪とリードが見えてきそうな仕草に、悪いとは思いつつもクスリと笑ってしまいます。怖くないことの証明をするために、私はサンダルのまま膝が浸かるぐらいまで海へと入りました。 「ほら〜、冷たくて気持ちいいですよ」 「海って世界中と繋がってるんだよ。嫌じゃん、ゴミとか色んなモノが混ざってる液体の中に己を置きたくない」 「現在進行形で海を楽しんでる人の前で言う言葉じゃないですよねソレ!?」  今日は朝から口数が少なめだった真さんですが、ここに来て意地でも海に入りたくないのか駄々を捏ねています。 「海って危険なんだよ。今年に入って何件水難事故が起こったと......」 「そこまで言うならわかりました」 「ホント? わかってくれた?」  私はにっこりと真さんの後ろに周り、真さんの背中を勢いよく押します。二、三歩よろめいた真さんの足首が海水に触れるのを見て、私は満足げに微笑みました。 「うわっ、鬼畜! 悪魔! 案外冷たいし!」 「だから冷たいって言ってるじゃないですか。ふふ、真夏の日差しに冷たい海! 気持ちがいいでしょう!」
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