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俺の友人に、一人だけかなりモテる奴がいる。 赤茶のセミロングに180の高身長。綺麗な顔立ちで女の心を掴むのが上手い。そいつの名は斉藤 結那【さいとう ゆな】。いつも女子に囲まれている色男だ。 「ユナく〜ん!お菓子あるよ?食べる〜?」「ユナくん、今日一緒に帰ろ〜!」「ユナー!お昼ご飯ウチのグループで食べてよ~?」 お前は大人気アイドルか。女子に囲まれてニコニコしながら楽しそうに話している結那はまさにそれであった。 「ほーんとモテるよなぁ結那は……」「あぁ。羨ましいぐらいに女が寄ってくる」「なぁ、奏人【かなと】も羨ましいよなー?」「なぜ俺に振る!」「だってさー、お前は─────」 皆は俺を哀れみの目で見つめた。ふざけんな。 「俺をそんな目で見るなぁぁあ!!」「可愛い可愛い奏人ちゃん」「小せぇモヤシの小柄ちゃん……」「奏人だっ!!小さくねぇし、モヤシでもねぇえ悪口やめろっ!」「でも、お前と結那が並ぶと背丈親子じゃん?」「そうそう。女子よりも小せぇし、色白だしよー。お前が女に生まれときゃあモテモテだったぜ?きっと」 揶揄う友人らには毎度腹が立つ。何故自分ばかりこんな思いをしなくちゃならんのか。 「そ、それ言うならおまえらだってモテねーじゃん!?」「まあな。結那みたいには無理だけど……」「俺は付き合ってた事あるぜ?」「俺はバレンタイン時にチョコ貰ったし!」「俺も。もちろん告られた事もある」「俺は今他校の子と付き合ってるけど……奏人ちゃん、お前は?」「グハッ!!」 自身の振った話で自滅した。意外とモテるんだな、お前ら……。この中でモテた事もチョコ貰った事も付き合った事もなかったの俺だけだった事実に落胆して結那を見つめる。結那は未だに女子に囲まれて、あーあー楽しそうだなぁオイ。 あーもう。これは全部結那のせいだ!! アイツがモテまくるから俺がこんな惨めな思いをする。そう考えると結那に対する嫉妬心が湧いた。 「やっぱりな。お前、そういう経験なさそうだもんなー?」「さすが奏人ちゃんだっ!」「おまえらなぁー!!」 怒り任せに立ち上がると、いつの間にか来ていた結那に背後から抱き留められた。 「みんな、奏人を苛めすぎ!」「ッ…結那!?」 俺よりもデカい結那は俺の身体を包み込むには十分で、それにすら怒りの炎がメラメラと燃え上がる。 「だってさー、奏人が捕らえられた宇宙人並みに小さいから……」「女の経験もねぇし!」「揶揄うのがおもしろいんだよ~!!」 ゲラゲラ笑う友人らに結那はクスリと笑った。 「へぇ。奏人、女の子の経験ないんだ?」「うるせーなぁ!悪いかよ!!」「教えてあげようか?モテる秘訣!」 結那の発言にプツリと堪忍袋の緒が切れた。 「はあぁぁあ”!?モテモテ自慢かコノヤロー!!教えてくれなくて結構ですぅ〜〜!つーか離れろ!モテ男が移るだろうがっ!!」「移れば逆に良いんじゃない?モテるし……」 ギュッと締め付けて離れない結那の腕の中でジタバタと暴れる。だが体力差でも敵わず、俺の藻掻く様を結那は不敵な笑みで見つめていた。 「ほら!奏人頑張って?」「うぐぐぐっっっ!む、無理だっ……強すぎだバカッ離せゴリラ!!」「ヤダ」「いてててテメッ、力入れ…つ、強い!ぎゃああ!!ゆ、許せ、ゴリ…いや、結那!結那様~~ギブギブ、ギブアップ!!」「もう?仕方ないなー」 最後は泣き寝入りをしてやっと解放された。体の骨全部持ってかれるかと思った……この馬鹿力め。友人達は俺らのやり取りをゲラゲラ笑って俺を馬鹿にする。 「だからお前は何時までたっても奏人“ちゃん”なんだよ!」 『ちくしょう、結那の奴めー!!』 笑い声が響くなか、俺は結那への復讐心が芽生え始めた。
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