AIが転校してきた。

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「今日から転校生が来る。名前はみんなで決めてくれ。」 朝の会での先生の発言に教室がざわついた。転校生に名前を決める??転校生が来ると言うだけで中学生にとっては大ニュースなのに、転校生に名前を決めるというパワーワードに引っ張られたせいか、転校生が来ること自体はあまり驚かれなかった。 「先生。意味がわかりません。」 1番前の席に学級委員の谷川さんが手を上げて発言した。 「転校生はロボットなんだ。しかも、学習機能持ちのAIを搭載している。」 「え?!」 再び教室がざわめいた。 ロボット!!僕はロボットが出るアニメをよく見ていたので嬉しかった。クラスの反応も興味深々という感じでマイナスな反応を示した人はいなかった。 「では、早速入ってきてもらおう。カモーン!」 先生がわざわざ英語で言ったのはコマンド的なものなのだろうか。 教室の教卓がある方を前とすると、前側のドアからそのロボットはやってきた。 しかし、それは人間の男の子にしか見えなかった。 「よろしく皆さん。今日からお世話になるロボットです。」 流暢な日本語を喋り、ロボットにはとてもじゃないが見えなかった。僕はアニメで見ているロボットと全然違うことに少しがっかりした。 「じゃあ、そうだな。福田の横の席に座ってくれ。」 先生はその日の帰りの会までに名前を決めておくように僕らに伝えたところで、朝の会はお開きとなった。 先生が居なくなると、クラスメイトたちは続々とロボットの元へと集まっていった。 「本当にロボット?」 「どこからきたの?」 「給食食べるの?」 「電池どこから入れるの?」 興味津々のようだ。僕だって聞きたいことはたくさんあるが、とても近づける状況じゃない。ロボットは質問ひとつひとつに答えていたが、次から次へと質問が飛んできた。埒が開かないと思ったのか、谷川さんがみんなをまとめた。 「みんな、一回静かにしよう。名前を考えなくちゃ。」 谷川さんに言われて、みんな一気に静かになった。この人の統率力はすごい。 「あなたはどんな名前がいいとかあるの?」 谷川さんはロボットに問いかける。 「いいえ。ただ、日本人っぽい名前がいいですね。」 ロボットは谷川さんを見つめてにっこりと笑った。僕なんかよりよっぽど表情が豊かに見える。 「日本人っぽい名前か〜。何か案ある人いる?」 すると隣の席の福田が答える。 「ヒロシとか?」 場が一瞬静かになる。 「誰かある?」 谷川さんが仕切り直す。 「じゃあ、イトウは?」 クラスのお調子者、荒木くんが答えた。イトウは僕のクラスの担任と同じ名字だ。 クラスはウケた。 「荒木、伊藤先生のこと堂々とイトウって呼びたいだけでしょ?」 「いやあ、俺は一生懸命考えましたけど?」 クラスはウケた。 肝心のロボットはどう思っているのだろうかと表情を覗き込んでみる。ロボットはほとんど表情を変えず、ニコニコしたままだった。 「じゃあ、イトウで反対の人いる?」 シーン。 そんなに適当な決め方で良いのか、と思ってしまったが、わざわざ反対に手を挙げようとは思わなかった。 「じゃあ、イトウで決まりね。荒木が言い出したんだから先生には荒木から言いなよ。」 谷川さんは先生から怒られるのを気にしているようだった。 「仕方ないな〜。」 荒木くんは背伸びしながら「余裕っしょ。」と言って、自分の席に戻った。
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