AIが転校してきた。

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ある日、いつものように朝の会が始まったが、イトウの席は空席のままだった。先生が「話がある。」と言った。 先生がいつもと違って神妙な顔つきをしていたので、ぼくたちはざわついた。 「イトウは今日欠席してもらっている。理由は今日みんなにイトウについて話し合いをしてもらうからだ。」 イトウについて?なんだろう。先生がイトウについて話すのはイトウが転校生として来た最初の日以来だ。 「明日からイトウをみんなに虐めてもらおうと思う。」 クラス内がざわついた。 イトウを虐めるだって!?そんなこと出来るわけがないじゃないか。 「実はこのことはイトウが転校してくる前から決まっていたことだ。イトウをこの学校に転校させた会社の方針だ。イトウに仲の良い友達から虐められる気持ちを学習させるのが目的らしい。仲の良い友達になってもらうために先生はこのことを今日まで隠していました。」 ぼくは豚を食べるために豚を育てたクラスのことを思い出した。ぼくたちは虐めるためにイトウと仲良くなったというのか。 「イトウには悪いが、イトウはAIだから心は無いし、イトウがイジメを学習することで今後イジメ問題をなくせるかもしれない。問題なければ明日からイジメを始めてもらう。どうしても反対だと言うのであれば、今日の帰りの会に報告をするように。」 先生はそう言うと、教室から出て行った。朝の会はお開きとなった。 先生は簡単に「心が無い」なんて言っているが、イトウは生きているし、心はあるんだ。それはぼくたちがよく分かっている。一緒に遊んで一緒に笑って、イトウはロボットである前に大事な友達なんだ。ぼくは心配して周りを見渡したが、みんなもぼくと同じ気持ちのようで安心した。各々近くの席の人と「あり得ない」「ふざけるな」など文句を言い合っていた。 「私はイトウを虐めるなんて反対だけど、賛成の人なんている?」 指揮を執ったのはやはり谷川さんだった。 「反対に決まってる!イトウを虐めるなんて有り得ないよ!」 同意したのは荒木くん。 「イジメがなくなる可能性があるなら賛成。」 イジメに賛成したのは福田くん。 「賛成意見ある?」 谷川さんは気にせず進めた。 しばらく待ったが他に賛成意見は出なかった。 「じゃあ決まりね。イトウは虐めない。」
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