AIが転校してきた。

　クラスではあっさりとイジメをしないということで意見がまとまったが、ぼくなりに今回の件を考えてみようと思う。

イトウを虐めることのメリットは、イトウをこの学校に転校させた会社に、「仲良かった人たちに虐められた時の感情」が加わることだ。多くの感情のデータが揃えば、より人間に近いAIを作り出すことができるだろう。

イトウを虐めることのデメリットはイトウが傷ついてしまうかもしれないことだ。AIだから傷つかない、だなんて大人の言うことは信用ならない。AIと本気で接したことがない人の言葉だろう。イトウはぼくたちの大親友であり、ロボットと人間の垣根を超えた仲なのだ。それにぼくたちも好きな人間を虐めるというのは胸が痛くなる。イジメなんてもの本来はあってはならないのだ。クラスのみんなに流されて、仕方なく行ってしまうものなのだ。

先生は本来こういう話し合いをぼくたちにしてほしかったのではないだろうか。自分たちが育てた豚を食べるか食べないかで揉めたクラスのように。育てていたのが猫だったら全然議論の内容も変わっていただろうが、育ててたのは普段から口にしている豚である。いつも豚を平気で食べているのに、自分たちで育てた豚は食べれないなんておかしい、とぼくは思っていた。
だから本来イトウは虐められるはずなのだ。

いつもぼくたちは平気で福田くんを虐めているのだから。