買い出し

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買い出し

 週末になった。結衣は予定通り大輔と自転車を見に行くことになった。  最初にアパートの近くにある自転車屋に行った。  自転車は無事に通勤に使える物が見つかった。 「じゃ、嬢ちゃん、乗れるように整備しておくからまた1時間後に取りにおいで」  自転車屋の店主が言った。 「ちょっと買い物に出たいんで少し遅れても大丈夫ですか?」 「いいよいいよ。それも兄ちゃんが付き合ってくれるのかい?」 「え?あの…」 「兄妹で仲が良くていいね。気を付けて行っておいで」 「ありがとうございます」  戸惑う結衣に大輔が代わりに答えた。  二人は表に停めてある大輔の車に乗り込んだ。  結衣が大輔の顔を見ると、ニヤニヤしていた。 「……あの店主さん、私と大ちゃんが兄妹に見えたみたいね」 「そうだな」 「大ちゃん訂正してくれればいいのに」 「だって俺が兄貴に見えるなんて初めてだもんな。今まで散々結衣の弟だって勘違いされてきたからさ」  大輔は何なら嬉しそうだった。  結衣が膨れてると、大輔は頭をポンポンして言った。 「ホームセンターに行く前に兄ちゃんがアイスでも買ってやろうか?」    アイスか。ちょっと食べたいかも…  すると大輔が吹き出した。 「何だよお前食べたいの?」 「え?べ、別に」 「顔に出てんぞ。分かりやすいな」 「ち、違…」 「結衣って顔と中身が全然ちげえな。俺、ガキだったから騙されてたんだな」 「どういう意味よ。大ちゃんこの間私の顔、成長してないって言ってたでしょ?」 「それは、結衣の顔は俺の想像通りにき…」  大輔は言い掛けて言葉を止めた。 「想像通り何?」 「別に、言いだろ。どうでも」  大輔の顔は少し赤かった。 「何それ」 「アイス買いに行くぞ。俺も食いたい」  大輔は車を出発させた。  何よ大ちゃん、ちょっと勘違いされたからってお兄さん面しちゃって。  でも…会ってからずっと機嫌いい。昔のことなんかなかったみたいに…  どうして?てか私、謝らないと。  でもタイミングが掴めない。あ〜どうしよう。  結局結衣は大輔に謝れずじまいで時間は経っていったのだった。  
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