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「え、これ、結衣が作ったの?」
「あ、うん」
「へえ〜サンキュ」
二人は鍋と買い物袋を交換した。
良かった。いらないって言われなくて。
「余ったカレーはタッパーに入れれば冷凍保存できるよ。鍋はそのまま返してくれればいいから。じゃあ私はこれで…」
「お前は飯どうすんの?」
「私は適当に済ますから大丈夫」
「なら、これ一緒に食おうぜ。上がってけよ」
「え?」
「ついでだしいいだろ。……あ!」
結衣を促そうとした大輔の動きが止まった。
「どうしたの?」
結衣は戸口で立ちすくんだままだった。
「米がねえ」
「ご飯?」
「ああ。この後コンビニに行こうと思ってたから」
「……私、今部屋でご飯炊いてあるよ」
買い出しに出る前にタイマーにしておいたのだ。
「マジ?なら、結衣の部屋で一緒に食ってもいい?」
「えっ私の部屋で?」
「…嫌か?」
「う、ううん。いいよ」
結衣は思わずOKを出してしまった。
「じゃ、すぐ鍋持って行くから先に部屋に戻ってて」
「わ、わかった」
半ば強引な大輔に嫌とも言えず結衣は部屋に戻った。
大ちゃんここに来るってどうしよう…部屋を見られちゃうけど…ま、いいか。
五分後に大輔が来た。
「お邪魔します。結衣、良かったらこれ一緒に飲もうぜ」
大輔ははビールを差し出した。
「ありがとう」
結衣はビールを受け取り大輔をリビングに案内した。
「どうぞ、適当に座ってね」
「ああ」
結衣は台所へ向かい、程なくしてカレーの準備ができた。
「サラダもあるじゃん」
「適当にあるものを切っただけだよ」
「ありがとな。いただきます」
二人で手を合わせて、大輔はカレーを口に入れた。
「うまい」
大輔の言葉に結衣はホッとした。
「あ、ありがと。味はお母さんと一緒」
「おばさんのカレーか。懐かしいな。俺よく結衣ん家で食べさせてもらったもんな」
そう言って大輔はチラッと結衣を見た。
「結衣、食わねえの?」
結衣は正座の姿勢に座り直した。
「あの、大ちゃん」
「うん?」
「………あの時はごめんなさい!」
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