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十年前の話
「えっどの時?お前俺に何かしたっけ」
大輔は驚いて言った。
「……大ちゃんが転校する少し前に、私、学校の下駄箱で酷いこと言っちゃったでしょ?そのことだよ」
「えっそんな前の話?」
大輔は呆気にとられて結衣を見た。
「お前気にしてたの?そんなこと」
「そんなことって…」
「俺だってその後結衣に酷いこと言っただろ。だからお互い様かなって…」
「それは私があんなことを言ったからでしょ?だから嫌われても仕方ないかなって。でも、大ちゃん会ってからそんなことなかったみたいに振る舞うから、私、謝るタイミングを逃しちゃってて…」
「そっか、だから時々挙動不審だったのか」
「な、何よ挙動不審って。でも大ちゃん、どうして私と再会しても態度が変わらなかったの?」
「だって、結衣、あの後手紙くれただろ?」
「えっ手紙?あれ、読んでくれたの?」
「当たり前だろ。俺、あの手紙を読んで結衣の本当の気持ちはこっちの方だったんだって思ったから…」
大輔もスプーンを置いて話し出した。
「結衣、手紙に俺といて楽しかったとか、転校しても大事な幼馴染みには変わらないとか、引っ越ししても元気で頑張ってとか書いてくれただろ?
あの下駄箱の時は確かにムカついたけど、思い返してみれば、笹垣たちがいて俺にも鬱陶しいことを言ってきたし、アイツらがきっとお前にも変な風に絡んで、それでお前もあんな風に言ったのかなって思い直したんだ」
「うん、実はそうだったの。でもそれは笹垣さん、大ちゃんのこと好きだったみたいで」
「そ、それは知らねえけど、その前からアイツ俺の好きな人は誰だってしつこく聞いてきたからな。だから別のクラスの奴って答えたんだ」
「それで笹垣さん私に絡んだんだ」
結衣の言葉に大輔の顔が赤くなった。
「……そうだな。で、でもガキの頃の話だ。今もだとか、か、勘違いすんじゃねえぞ」
「じゃ、大ちゃん私のことを怒ってないの?」
「当たり前だろ。あの折り紙のくす玉も嬉しかったよ。あんなの作れるの凄えなって思ったし」
「そうなんだ…」
結衣は大輔の本心を聞いて心が晴れ晴れしてきたのだった。
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