十年前の話

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「……だから俺も返事を書かねえとと思ったんだけど、罰が悪くて書けなかった。それは悪かったなって…」    大ちゃんも同じ気持ちだったんだ。 「良かった。大ちゃん無理して私に付き合ってるのかと思ってたから」 「そんな訳ねえだろ。もしそうなら最初から結衣がこのアパートに越してくるのを断ってたよ」 「そっか…」 「結衣、飲もうぜ。そういえば乾杯もしてなかったな」    大輔とビールの缶をカチンと合わせた。  少し飲んで結衣は呟いた。 「変な感じ。大ちゃんとビールを飲むなんてね」 「お互いに歳食ったってことだ」 「それはさすがに言い過ぎじゃない?」  結衣は笑った。そして思いきって聞いてみた。 「ねえ、大ちゃん」 「ん?」 「結局大ちゃんの昔好きな人って誰だったの?」 「……は?」  大輔は固まった。 「別のクラスの子って言ってたでしょ?誰だったのかな〜って」 「……お前わかんねえの?」 「うん」 「じゃ、笹垣がお前に絡んだのは何でなんだ?」 「私が単なる幼馴染みだからでしょ?」  結衣はキョトンとして答えた。  大輔は結衣をじっと見てため息を付いた。 「……やっぱ結衣って天然なんだな。再会してから薄々そうかなって思ってたんだ。俺、ガキだったから騙されてたのか」 「な、何よそれ」 「しっかり者だったのは過去の話なんだな。寧ろ今は俺がしっかりしねえとな」 「ち、ちょっと何勝手な事言ってるのっそれより質問の答えは?結局誰が好きだったのよ」 「もういいよ、その話は………お前のあんま知らねえ奴だよ」 「ケチ。教えてくれたっていいのに」 「それより、結衣は今、彼氏いんの?」 「え?」  大輔に逆に聞かれて結衣はドキッとなった。
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