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「い、いないよ。いたけど去年別れた」
「何で?」
結衣は大輔の顔を見た。からかおうとする様子はなかった。
「一つ上のサークルの先輩と付き合ってたんだけど、向こうが社会人になってから忙しくてあまり会えなくなっちゃったの。その上私がこっちの市で先生やることが決まってから益々ギクシャクしちゃって…」
「ふーん…でもやっぱいたのか、彼氏」
「ど、どういう意味よ。いなさそうに見えたの?」
「別に、そういう意味じゃねえけど」
「な、何よそれ…てか、大ちゃんは?彼女さんはいるの?」
「いねえ」
そうなんだ。そうか、いたらさすがに私とこんな風には過ごさないか。
「で、でも大学の時にはいたんでしょ?」
「ああ」
「同じ大学のコ?」
「そうだな。俺もサークルが一緒の二つ下のコ」
やっぱりね。大ちゃん顔整ってるし、まあ…モテそう…
「何で別れちゃったの?」
「…あんま、構ってやれなくて」
「どうして?」
「教員採用の勉強とか…卒論とか…」
「そうなんだ…」
何か意外。大ちゃんマメそうなのに。私にこんなに親切だし。
「じゃあ、新しい学校で彼女さん、できるといいね」
「それどころじゃねえだろ」
「そうなの?」
「結衣はそんな余裕あんの?学校で彼氏探しする」
「……確かにないかも」
「お前三年生担任だっけ」
「うん、大ちゃんは四年生だよね」
それは今日買い出しした時に話していた。
「そういえばあの人は何年生?」
「え?」
「結衣の学校の同期の先生」
「ああ、白石先生?あの先生は五年生だよ」
「えっ五年生?」
「白石先生、実は一年講師やってたんだよね。だからみたい」
「新卒じゃねえんだ。ふーん。落ち着いてる感じするもんな」
「黛先生は?」
「アイツは三年生」
「私と一緒なんだ」
「ああ」
黛先生のことアイツ呼ばわりなんだ。まだ
知り合って間もないのに。もう仲良くなったのかな?
結衣は内心目を丸くした。
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