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「どうして私の名前…」
結衣は驚いてその男性を見た。
「お前、おばさんから聞いてねえの?」
「え?」
「俺、長谷川大輔だよ 覚えてねえ?小五までマンションの隣に住んでただろ」
「えっ、だ、大ちゃん!?小五で転校しちゃった?」
結衣は思わず大きな声を出してしまった。
「そうだよ」
「私、てっきり女性だと…」
「おばさんがそう言ったのか?」
そういえばお母さんからは女性とも男性だとも言われてない…お母さんの知り合いのお子さんとしか…私も名字しか聞いてないし…
でもお母さん、私が女性と勘違いしていても黙っていたよね…
「う、ううん、でも、あの…」
結衣は一気に挙動不審になった。
「……お前感じ変わったな」
大輔は結衣をジロジロ見て言った。
「え?」
「ガキの頃はもっとしっかりしてなかったか?」
「ち、違…ちょっとびっくりして」
「お前も先生になって、◯△小に赴任するんだろ?」
「それもうちのお母さんから聞いてるの?」
「ああ、お袋を経由してな」
お母さん、学校名まで話したんだ。
「大ちゃんは確か隣の学校なんだよね。だからこのアパートに住むって…」
「ここから学校近いからな。お前もだろ?」
「う、うん…大ちゃんも先生になったんだね」
「まあな。お前この市に知り合い、いねえんだろ?よろしくお願いしますねっておばさんから頼まれてるぞ」
「お母さん、そんなことまで言ったんだ…」
結衣はいたたまれなくなった。
「今度は俺が世話する番だな」
大輔はそう言ってニヤッと笑った。
「大ちゃんにせ、世話は掛けないから。大丈夫」
「どうだかな」
「それよりこれ、よかったら」
結衣は引っ越し蕎麦を押し付けるように大輔に渡した。
「あ、ああ、サンキュ」
「じゃあ私はこれで…」
結衣はそそくさと退散しようとしたが
「ちょっと待って」
大輔は結衣を呼び止めて部屋の中に入っていった。
大ちゃん何?部屋に戻りたいんだけど…
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