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幼馴染み
結衣は部屋に戻って母親に連絡した。
自宅の電話にはすぐ繋がった。
「もしもしお母さん?結衣だけど」
「あら、結衣。アパートの方たちとの挨拶は無事に済んだ?」
母親は能天気に言った。
「お母さんっ大ちゃんが隣の部屋ってどういうこと!?どうして言ってくれなかったの?」
「だってあなた、もし大輔君が同じアパートだって言ったら住まないでしょ?」
「そりゃそうよ」
「だから黙ってたのよ。馴染みのない市に先生の仕事もしながら一人暮らしするんでしょ?だから大輔君が一緒なのは、結衣にとって心強いと思って」
「そんなことないよ。もうっお母さん、何で…」
「あなたと大輔君、小さい頃はとても仲良しだったじゃない」
「昔の話だよ。何年経ってると思ってるの?大ちゃんとは引っ越してからずっと音信不通だったし…」
「それは結衣と大輔君がでしょ?お母さんは長谷川さんとその後も年賀状や電話でやり取りしてたわよ」
長谷川さんとは大輔の母親のことである。
「それに、お母さんおばさんや大ちゃんに私のことペラペラと…」
「大輔君、この間の年賀状で写真見たけどイケメンになったわね。結衣、良かったじゃない」
「良くないっ」
「結衣…どうして大輔君にそんな態度なの。今日あの子に会ってどうだった?失礼な態度をとらなかったでしょうね?」
「別に…普通にしたよ」
若干、挙動不審に見られたが。
「お世話になるんだから、愛想良くしなさいよ」
「私は頼んでないし」
「結衣、長谷川さんがね、大輔君はあなたの面倒を見ることを快く了解してくれたって言ってたのよ。有り難い話だわ。結衣、くれぐれも失礼のないようにね」
母は念押しをしてきた。
「何それ、面倒見るって、私、子どもじゃないし。お母さん、今すぐおばさんに連絡して撤回してもらうように伝え…」
「じゃあ、また何かあったら連絡してね」
「ちょっとお母さ…」
母の電話は切れてしまった。
結衣はため息を付いた。
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