哀も変わらぬ

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哀も変わらぬ

とうとう言われてしまった。 なぜ、私は造られたのだろう。何のために、この世界に来た。 「愛が分からないというのですか。なぜそう決めつけるのですか」 何もかもが消えたこの世界。 私たちだけは大丈夫だと信じていた。こんな世界の果てに来てまでも。 彼はもう、私のことを見ていなかった。 『涙も流れないただの機械』 その言葉を、頭の中で反芻していた。もう、壊れそうだった。 「もう何もないんだよ、わかるだろう。ね? 待っていれば明日も明後日も来る。ここは汚れた星だけど、廃れた場所だけど、朝日は昇る。また日は沈んで、そして昇る。何度も何度も。でもその先には何もない」 彼は目を伏せた。 その背後には、この世のものとは思えないほどの世界が広がっていた。 崩れ落ちた建物、1つ1つに反射する光。橙色が世界を染め上げていく。 朽ちゆく世界が輝きを取り戻していくように、錯覚をするほどだった。 美しい。強くそう思った。 機械だけど、美しさも痛みも分かるんだよ。私には心があって。 それで、それできっと。 「何もない、何もないんだよ」 彼は言い、振り返って私を見た。 初めて会った時のような美しい目をしていた。全てを悟ったような目。 造りものの目から、1つ、雫がこぼれ落ちた。 頬を伝ってゆく何か。これはきっと、涙というものだ。 ねぇ、私にも、 私にも、 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ピー。ピー。 エラー、エラー。 「生命体の自我がコントロール可能域の上限に達しました。緊急事態につき、生命維持活動を停止します」 彼女の目蓋は濡れたまま、何もなかったように伏せられていた。
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