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エピローグ
溢れ出した彼女の涙を、彼はじっと見つめていた。
彼の目からも、涙が零れていた。世界の果てで会った彼女に、美しいと言われた目。その目には硝子の欠片をあつめて縫い合わせたような、エメラルドの輝きがまだ確かにあった。
高度のAI搭載の、ありふれた人工生命体。
彼女の肩の部分を開けて、隠されていた携帯用の銃器を取り出す。彼は場所を知っていた。以前、彼女のような人工生命体に遭遇したことがあったからだ。
銃弾は、1つも減っていなかった。
そしてそれを自分に向けて、引き金を引く。
何もない世界に銃声が響き渡り、砕け散る。
彼は最期、笑っていた。
そう。世界はきっと。
綺麗だったんだ。ただただ美しくて。
そう、言うしかなかった。
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