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セイタカアワダチソウが泣いている
春なのに
こんなに天気がいいのに
陽溜まりの中で
此処は寒いと泣いている
他の花は楽しそうに日光浴をしているのに
その花だけが
暗鬱な表情を浮かべ萎れている
凍えている
一人だけ咲く場所を違えてしまったかのように
或いは
まるで別の場所で咲いているかのように
そう
彼女は間違えてしまったのだ
本来は此処で咲いてはいけなかったのに
繁殖してはいけない外来種だったのに
他のセイタカアワダチソウは
その事を罪悪だとは思っていないのに
彼女だけが罪の意識に囚われて
苦しんでいる
自分を責めている
そうやって
彼女は短い一生を自責の念に囚われたまま
やがて枯れてゆく
自分の零した種子がまた翌年芽吹いてしまう事を
怖れ乍ら
セイタカアワダチソウが泣いている
たった一人だけ
自分の存在を嘆いている
凍え乍ら
震え乍ら
セイタカアワダチソウが
泣いている
(2023年5月2日作の詩)
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