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メリーちゃんの手術は三日後よ
その後の展開は早かった。
まるで随分前から段取りをしていたかのようにすんなり話が進んだ。
サリーはしばらく町長の元で面倒を見てもらうことになった。
報酬金の割り当ても全て計算が済まされた。
手術の準備だと言われ、私のピンクの髪は短く切り揃えられた。
数日後には窓のないバスが私を迎えに来た。
「サリー。町長の言うことしっかり聞いて、ルルちゃんのお世話も頑張るんだよ」
ルルとは、町長の孫の名前だ。
まだ生まれたばかりの女の子だ。
「はい! 任せてくださいなのです! 私もメリーお姉さまに負けずにしっかり働くのです!」
前列の中央に立つ町長の隣から、サリーは元気いっぱいに言った。
私が町を出発する前日。
私と離れたくないと言って泣いていたサリー。
だが、私が幼いルルの世話するように提案すると、責任感が芽生えたせいか、落ち着きを取り戻してくれた。
見送りに来てくれた数人の町の人たちが、複雑な表情を私に向けていた。
「では、行きましょう。メリー殿」
真っ黒なスーツに身を包んだサングラスのおじさん。
その人は私の背中へ手を回し、窓のないバスの中へと導く。
私に恐怖はなかった。
町長から手術がどのようなものかは、詳しく説明を受けていたからだ。
いや、今思えば、あまり考えないようにしていただけかもしれない……。
バスの中に乗り込むと、運転席以外に座席はなく、絨毯の敷かれた平らな床に、いくつものクッションが置かれていた。
車内には既に数人の男女がいて、各々くつろいでいる。
窓際にはスーツにサングラスのおじさんが等間隔で四人立っている。
バスの扉が閉められる寸前。
悲しみに顔を歪ませたサリーと目が合った。
サリーの泣き声だけが耳に届き、私も寂しさに顔をしかめた。
バスが動き出しても、サリーの泣き声はしばらくの間、小さくなることはなかった。
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