買いに行きましょう

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買いに行きましょう

 ホテルの様にいくつもの扉が並んだ廊下。  部屋は一人一つずつ用意されているようだった。  他には、いつでも利用可能な大広間がいくつか存在した。  ポートリフトはとても快適だった。  選択した別階のリフトへと移動するのに三秒もかからない。  扉が上下に開く箱の形をしたポートリフトの中は、水のようなもので満たされているが、それに触れても全く濡れることはなかった。  大広間には、数多くの暇つぶし道具が置かれていた。  背の高いハシゴ付き本棚には、何ヵ国語もの書籍が並べられており、その中には絵本も存在した。  長い長い、館内案内だった。  自由に出入りできる場所は、思っていたよりも多く存在していた。   「では、直ぐに手術を受けない方は、このまま自由におくつろぎください」  白衣の研究員が、被験者たちの前で声を張ってそう言った。  その研究員が数人の被験者を別の部屋へと連れて行った後も、しばらくは皆、その場に留まった。  だが、数分もすれば、その大広間には誰もいなくなり、みんなビルの外へと出かけて行った。  私は一人、自分に与えられた部屋を目指した。  その日は、何をする気にもなれず、長時間に渡る移動で疲れてしまったこともあり、そのまま眠りについた。  次の日。  私は朝早くに目を覚ました。 「サリー……。泣いてないかな」  サリーのことを考えながら、何もせずに部屋の中で過ごした。  だが、それも夕方までで限界だった。 (退屈だなあ。それに、お腹すいちゃった)  私は堪らず部屋を出た。  廊下には誰一人歩いていない。 (大広間に行ってみようかな。でもお腹空いたな。食堂、どこだったっけ)  私は取り敢えず一番近い広間に向かった。    入口から中を覗くと、そこには数人の若者がたむろしていた。とても会話に混ざれる雰囲気ではない。  私はそっとその場を離れ、ビルの中を徘徊した。    いつまで経っても食堂に辿り着けない。 (一回、エントランスに行ってみよう)  ふと、そう思い立った。  エントランスまで移動すると、直ぐにスミスを見つけることができた。 「あらメリーちゃん。お外へ行きたいの?」  スミスはすぐさま私に駆け寄り、中腰になってそう聞いてきた。  私は、外に出るのも悪くないと思ったが、やはり空腹には耐えられない。 「私……何も食べてなくて……」  おずおずとそう言って、私は指をいじり出す。 「まあ、そうだったのね。迷っちゃった? 食事制限と言っても、決められたもの以外口にしなければ、いくら食事を抜いても問題ないから、誰も気付けなかったのね」  スミスは眉を八の字にして、ごめんねと謝った。  彼女は私を食堂まで案内してくれて、食事を用意してくれた。 (全然人がいない……。みんな外に行ってるのかな) 「まだ日が落ちるには時間があるから、少し外の空気でも吸いに行きましょうか」  満腹になった私に、タイミング良くスミスは提案した。  私が控えめに頷いて同意の意思を伝えると、スミスはにっこりと微笑み、私をビルの外に連れ出してくれたのだった。
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