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僕はリビング用にAI機能付きのエアコンを購入した。
正直言うとAIなんかいらなくて、電気代が安くすみ、部屋を冷やしてくれたらそれで良し。なのだが、まぁ、なんだ、いろいろ事情が重なって、その機種が1番安く買えたので、致し方なくAI機能付きを買ったのだが……
AI、口うるさいのだ。
『提案します。帰宅時間にタイマーをかけたらどうですか?』
『明日の朝は3℃気温が上昇します。タイマーをかけたらどうですか?』
『暑いですよ。タイマーかけたらどうですか?』
お前は母親かっ!
そして、なぜかやたらタイマーを勧めてくる。最後の台詞なんて、今、暑いのだから、タイマーじゃなく今かけろよっと突っ込みたくなる。
人間にタイマーをかけさせたら、キャッシュバックでもあるのでは? と、もはや疑いたくなるレベルだ。
だが、この機種の売りは人がいない時に自分で考え、自分で掃除をする事である。面倒くさがり屋の僕にとって、これは魅力的な機能だ。多少の口うるささは我慢しよう。さすがAI。これぞAI。なんて賢いんだ。
1ヶ月経った……まぁ、まだそんなに汚れてないのかな?
2ヶ月経った……うーん、まだ汚れてないのかな?
3ヶ月経った……そろそろ、掃除するはずだ。
……
……
……
……
いつ掃除するんだ!
かなりエアコンを使っているのに、待てど暮らせど掃除をしない。僕は痺れを切らし、メーカーに電話を入れた。
「すみません。AI掃除しないんですけど」
「ああ、1年は手動でやってください」
「はっ?」
「人工知能ですので……1年は勉強させなきゃいけないんです」
「はっ?」
「春夏秋冬すぎてから、掃除します」
……保証期間すぎちゃうじゃん!!
致し方ない。人工知能だって最初は赤ん坊のようなものである。経験を積んでなんぼ。1年間で僕の生活を覚えてくれ。
1年後。
『人がいなくなりました。掃除します』
エアコンが初めて自分で考え、掃除をした時は感動ものである。
やっとか…………やっと……掃除する事を覚えたか……
だが、AIは計算をミスったのだろう。僕が帰ってきたのが予想外に早く、掃除を中途半端に止めてしまった。
『帰ってきたので、止めます』
止めるなーーっていうか、続きはいつやるんだーー! なんで寝ている時にやらないんだぁぁ!!
僕の心の叫びはAIには、もちろん届かない。
どんなに怒っても、叱っても、文句を言っても、AIは知らぬ存ぜぬなのだから。
我が家のエアコンは今日もおバカである。
タイマーをやたら勧め、掃除の続きをしようともしない。
『暑いですよ。タイマーかけたらどうですか?』
僕は彼が賢くなる日を夢見て、今日もせっせっと掃除をする。
《了》
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