Ⅰ 壊して、お願い

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◇ その行為が 終わってしまえば 私の裸が見苦しいのか 私の体を隠すように 彼は柔らかい布団を 私に掛ける 「――ありがとう」 私はその厚く 柔らかい布団に くるまるように 身を包んだ 彼にいたぶられた 体中が痛い… 目に入る 自分の右手の手首は 大きな猫にでも 引っ掛かれたような 跡が有り 血が滲んでいる その鮮血は 私の腕から 滴り落ちそうで 落ちない 私がそれを ただ呆然とだけども 少し楽しみながら 見ていると 彼はその楽しみを 私から奪うように その傷口を、ペロリ と長い舌を使い 舐めた 「お前って本当に 変な奴だよな? 傷付けられて 喜んでいるんだから」 彼はそう言うと 床に落ちていた 煙草の箱を手に取り その中から 一本を引き出し それにジッポで 火を点す 最初の一口目は 大きく吸い込み 大きく吐き出す 直ぐに、部屋の中は 煙草の匂いで充満する 「お前の名前のユリって 花のユリ?」 彼は煙草をくわえたまま ベッドに寝転ぶ 私に話し掛けながらも 私を見ようともしない
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