Ⅷ 過去と、現在

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まだ日が高い 13時を過ぎた頃 一人の中年の男が 家の庭側の掃き出し窓の ガラスを 素手で叩き破り 私達の家の中へと 無断で入って来た その不審な男の侵入を 何故、マスコミの人達の 誰も止めなかったのか… この時は、そんな事を 不思議に思う 余裕が無い程に この場は緊迫していた お母さんは その男から 私を守るように 無我夢中で 私の体を庇うように 強く抱きしめていた 私は恐怖を感じ 体を震わせながらも お母さんの 体と腕の間から 少し、見てしまった その男は持っていた デパートの白い紙袋から 使い込んだような 出刃包丁を取り出すと その紙袋を 床に投げ捨てていた 床に尻を着き 怯える父親に近付くと 彼は父親を何度も その包丁で 突き刺していた 音をたて 赤い血が 部屋に飛び散る 父親の断末魔のような 悲鳴が 部屋に響き渡り その異変に気付いた マスコミ達迄もが 私達の家に 庭側の掃き出し窓から 無断で入ってきていた
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