Ⅸ 彼は、狂ってない

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Ⅸ 彼は、狂ってない

新学期が始まり 私は以前とは違い 毎日学校へと通っていた 始業式の日 自分の教室へと 足を踏み入れ 「おはよう」 私がそう教室内に 声を掛けた時 最初、誰もが 予想外だったように、 驚き戸惑った表情を 浮かべていた 皆、私の顔よりも 周囲の者の表情を 窺って見ている 「――おはよう」 一人の女生徒が そう言うと 周りも思い出したように ぎこちない笑顔を 浮かべながらも 私に挨拶を 返してくれた 生まれて初めて 嬉しさで 涙が溢れそうになった 友達は今も 依然出来ないが まだそこ迄は 望んでいない まだ、そこ迄は 望んではいけない それが叶わなくて 絶望してしまったら また元に戻ってしまう 叶わない事は 望んではいけない
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