お花畑

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「はぁ? 3番ゲートって何処だ? この橋渡らせろ!」  男はしばし悪態をつきシャッターを蹴飛ばし始めた。すると突然ゲートの向こうから大きめのドローンが現れた。ドローンから鋼鉄の足が伸び男を羽交い締めにし、吊り上げた。「何するんだー!」と暴れる男をもろともせず、ドローンは川下へと飛んで行った。  小さくなるドローンを僕は呆然と見送った。まさかこんな所にドローンがいるなんて。それも人間を軽々と持ち上げられるドローンだ。災害救助に役立ちそうだ。それからあのゲートは何なのだ。前にいる人物の判定が出来る。シャッターも勝手に閉まる。何処かで誰かが操作しているのだろうか。 「いや、まさかここにドローンがあるとは。驚きました」  僕の前に並んでいた恰幅の良い中年男性が呟いた。 「本当に。霊界もハイテク化してるんですね」  「ですね。しかし3番ゲートとは。あの男相当やらかしたようですね」 「3番ゲートって何ですか? みんながあの橋を渡れるんじゃないんですか?」  僕は男に聞いた。男は自慢げに大きなお腹を突き出し語り始めた。 「この川を渡るには3つのルートがあるんですよ。真面目に生きてきた人間はそこの橋を渡れる。でもそんな人間は殆どいない。 そこそこ罪を犯した人間は2番ゲートで船に乗って渡ります。まあ大抵の人間はそうでしょう。 そして重罪を犯した者は川下の3番ゲートです。川下は流れも早い激流です。そこを泳いで渡らなければならない。岩に打ち付けられたりして大変らしいです。でも川は深いので怪我をしても疲れても休む事はできない。もし溺れてしまったら川の中にいる蛇に食いつかれ、そのまま川底に引きずり込まれるそうです」 「ひー、既に地獄じゃないですか。何としてでも渡りきらなければ。では向こう岸は極楽なんですか?」 「いや、まだ安心はできません。向こう岸には奪衣婆(だつえば)がいます。そこで第2の審判が行われる。服を剥ぎ取られ、服の重さで罪の重さが分かるんです。そして丸裸のまま閻魔大王の前に突き出され、最後の審判を受けるんです」  閻魔大王……昔から聞いた事はあったが、とうとう本人に会えるとは。やはり”あの世”はあったのだ。
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