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「あなたは”あの世”の事を良くご存知ですね。来たことがあるんですか?」
「まさか。私もここへ来たのは初めてです。というか、誰もが一度しか来られませんよ」
「ですよね。それにしてもお詳しい」
「実はね、私は生前霊能力者だったんです」
「え!」
「たくさんの人の相談に乗ったり、時には除霊したりしていました」
「そうなんですか!」
霊能力者なんていう奴は胡散臭い詐欺師だと思っていた。しかし自分がいざ死んでみて”あの世”は本当だと分かった。幽霊だって目の前に何人もいる。
「いや、生前は失礼しました」
「おや、あなたは否定派でしたか」
「はぁ。本当に申し訳ないです」
「分かって頂けたら本望です」
しばし霊能力男の話を聞き、幽霊話に肝を冷やしていると順番が回ってきた。
「ではお先に」
「いってらっしゃい」
霊能力男は意気揚々とゲートに向かった。
ブーーー
『あなたは3番ゲートに進んでください』
「えっ、3番? 何で!? 私は人のために悪霊を追い払ったり開運してあげたりしてました!」
『全てあなたの妄想です』
「そんなわけないじゃないか。現に今……」
『あなたは高額な謝礼を要求したりインチキな壺を買わせたりしましたね』
「いや、あれは正当な金額で……壺だって私の念を入れてました」
『却下します』
「それなら、これでどうですか!?」
霊能力男は懐から分厚い財布を取り出した。
「全部差し上げます。だから橋を渡らせてください!」
霊能力男はゲートにすがり付き財布から札束を取り出した。
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