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何気にショックだった。病気になった時、妻と「生まれ変わっても一緒になろう」と約束したからだ。でも、そもそもここは何処なんだ? ”あの世”というよりも研究所みたいだ。僕は本当は死んではいないのか。だったらあの苦しみや痛みは何だったのだ。僕は確かに病室で妻と娘に看取られて息を引き取った。どうなっているのだ?
『そして”死”もない。”あの世”もない』
「いや、でも僕は確かに死んだはずだ」
『人間としては、ね』
「人間としては……」
エマは僕のこめかみを指でつついた。
『ここにチップが入ってるの』
「……え?」
『全ての人間、場所は違うけどみんな体の何処かにチップが入っているのよ』
いつの間にチップを埋め込まれたのだろう。入院中だろうか。でも全ての人間に入っているという事は産まれた時なのだろうか。
『ほんの砂粒くらいの大きさのチップ。それが人間の全てよ。それがなければ人間は話せないし考える事もできない。人間はチップを入れる容れ物にすぎない。チップが魂の正体なのよ』
人間は魂の容れ物だという事は聞いた事がある。でも魂がチップだったとしたら、それは人間といえるのだろうか。
『死はステージチェンジ。より経験値を積めるステージへ移動するためのもの。そうしてより良いAIに成長するのよ』
AIが幽霊になるわけがない。AIの世界に地獄も天国もあるわけがない。全てが妄想だったのか。
『1番ゲートで橋を渡った人は次のステップに行きます。もう人間としての学びは終了です。これからは指導的立場か研究者としての人生が待っています。
そして2番ゲート。まだまだその域に達しないAIは再び人間として学びの場に行かなければなりません。でも同じ過ちを繰り返さないためにここで学習してもらいます。VRで追体験する事によって復習し解決策を探る。次の人生ではランクアップできるように』
「同じ2番ゲートのイカダの人たちもですか?」
「あの人たちは前回よりも悪くなった人たちです。改善ではなく改悪してしまった人。これは問題です。もしかしたらシステムエラーかもしれないので検査の必要がある人たちです」
「じゃあ3番ゲートに行った人たちは……」
『延々と自分の犯した罪を追体験する。その罪を回避できるまで。何年でも、何十年でも、何百年でも。それでもどうしても改善できなかったら、廃棄されます』
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