真相

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真相

帰宅してからずっとタクミは考えていた。 ハナの話たことを、なんとなく自分の事と比べてみていた。 ハナの父親は、8つ上の妊娠中の娘がいる。 俺の姉ちゃんは6つ上だ。妊娠してない。 でも、俺の父親は、職場の若い女に手ぇ出して、子供できたからそっちと結婚すると言って出て行った。相手の女は何歳だったかな? いや、ハナの親が離婚したのはここ数ヶ月のことらしいから、俺の家は去年の夏だしな。 いやいや、俺は何を考えてるんだ? ハナの父親と俺の父親が同じかもって思ったのか?まさか。だらしのない父親ってところは、同じかもしれない。そして、どちらも経済的に裕福で俺らにお金の心配はさせてないってところは、偉いな。いやそれ、有難いのか? それでも何かが引っかかる感じのタクミだった。夕飯が済んでダラダラとテレビを流している時、台所で洗い物をしている母親に聞いてみた。 「ねえ、あの人今どこで何してんの?」 母親はすぐに分かったようで、 「向こうのマンションで一緒にいるんでしょ? お互いIT企業なんだから、家で子供見ながら在宅ワークしてるんじゃない?」 「マンションってどこ?都内?」 「渋谷じゃない?なんで気になるの?」 「いや、今日転校生来てさ。 その子も親が離婚して、こっち来たらしくて。 父親に自分より年上の娘がいたんだってさ。あ、転校生は女子だけど。その年上の娘に子供できて、そのお祝いに豪華ランチしてたのを 母親が見て離婚したって。いろいろあんだなーと思ってさ。」 「よくそんなこと知ってるわね。話したの? タクミかっこいいから話しかけられた?」 母親が明るい口調で返してくるのに気が緩み、 タクミは今朝の出来事をすっかり話した。 ハナから聞いた話もそのまま話した。 タクミが話し終えると、それまでフンフンと相槌を打っていた母親が、少し低いトーンでこう言った。 「クドウ ハナさん?同い年なのね。へぇ。 それって、もしかしたら、クドウさんの方が浮気相手ってことない?だって、ねえ。 父親って娘はかわいいものよ。実の娘が小学生になって生意気になる頃、クドウさんが生まれてるし。クドウさんのお母さんが別宅だったんじゃないかしら。いえいえ、ただの憶測よ。」 そう言われてタクミは、今朝のハナの母親の様子を思い返した。ハナが初対面の相手にプライベートな話をしていても、やめなさいとも言わずにいた。否定も肯定もしなかった様子は、 もしかしたら、そうなのかもしれない。 ハナはそんなこと思いもせずに育ったのかも、と思うと、少しハナに同情した。
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