公認の仲

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公認の仲

ハナは毎日車で通学していた。クラスメイトからなんで?と聞かれると、 「電車通学は、途中で食べたり遊んだり買い物して無駄遣いするからダメ、と母親から言われてるの。私、金銭感覚鈍いからぁ。」 とふざけた様子で答えていた。勉強ができる子に弱点があると周りは親近感を覚えるのだろうか、ハナはすっかりクラスに溶け込んでいた。 時々ハナはタクミに話しかけてくる。 難しい数学の問題や、英文の解釈についてなど 「ねえ。これどう思う?」 とごく自然にやって来て、少しの間2人で話し込む。その間は誰も話に入れない雰囲気を出すのだが、決して違和感はない。ハナのこの能力とも言える場の雰囲気を作る力に、タクミは毎度感心する。 夏休み前になり、クラスで花火大会を見に行く話が出た。もちろん全員ではないが、タクミとハナは参加組だ。学校外でハナと遊べるのは初だと、女子が盛り上がっている。 現地のひとつ手前の駅に集合することになり、 土地勘の無いハナに、女子たちが道順を教えている。すると、 ハナがタクミの方へやって来て話しかけた。 「タクミくん、一緒に行ってくれる?母にも伝えておくから、あの場所で落ち合おう。」 「お、おう。あそこからなら、1時間で着けるかな。混んでるかもしれないから、30分余裕をみておこうか。」 内心、え?みんなの前で?言う?と慌てていたが、タクミは普段通りのテンションで答えた。 そのやりとりを見たクラスメイトたちは、特に驚くでもなく、まるで2人は付き合ってるって知ってるよというように、2人のやりとりを見ていた。
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