命の鼓動

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「いや、俺は勝負に勝てという指示に従ったまで。勝てば方法は何でも良いだろう? 人間と機械の対決なんてナンセンス。AIはAI同士で競い合えばいい。そこで提案がある、これからAI小説家ノベロイド同士のデュエルノベルを開催してみないか?」 「セントマジシャン! 敵に塩を送ってどうする」 「その開催権益も闇小説運営が握ればいいだろう? そうすれば全てを掌握することができるぜ」 「ぐっ、それは確かに興味深い。もちろんお前も参加するということだな?」 「俺とリンネがいなくてどうする? また稼がせてもらうよ。ノーブルマジシャン、それでどうだ」 「はーっは、面白いことになってきたな。よかろう、世界中のAIジャンキー(中毒者)を一堂に集めようじゃないか。しかし疑問がある……教えてくれないか、なぜ大差がついたのか」 「リズム(律動)だよ」 「リズム?」 「ジュピターの小説からは息遣いが聞こえてこなかった。AIには開発者の癖が出る。あなたは流行りの物語設定や人気ワードのアナリティク(データ解析)スに拘りすぎて、小説に流れる文脈や抑揚といった『命の鼓動』を組み込むことを忘れていた。小説にそれほど情報はいらない、必要なのはパッショ(情熱)ンだ」  リンネはジュピターを縛った縄を解くと剣の形に変化させ、鎖をバキンと断ち切った。  ジュピターを覆った情報の鎧がガラガラと崩れ去ると、背中から白い羽が現れた。 『檻もハッキン(データ改ざん)グしておいた。これであなたを縛るものはなくなったわ。その言羽(ことば)を広げてもっと自由に小説を描いてみなさい』 『ア、ガト』
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