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「幸、どうした…?」
「いや、やっぱ俺って不幸だなって」
「幸が重症だ!!誰かー!救急車を!」
「やめろ石川バカ、バカ石川バカ」
「バカって3回言った?」
朝の星野との話から、
あの星野のしつこい質問攻めはパッタリ消えていた。
時は経て、お昼休み。
今日は教室でお弁当を食していた。
「星野の質問攻めなくなったん?じゃあよかったじゃん。なにが不幸なん?」
「………あれ?確かに、なにが不幸なんだっけ」
「実は星野の質問攻めが楽しくなってきてたとか!?」
「バカ」
「もうシンプルに罵倒!」
ただなにが不幸かって言われると、なんか会って2日目の星野に感情的になりすぎたというか…。
痛いというか。恥ずかしいというか。
「死にたいというか〜〜〜〜!」
「なんか幸、恋する乙女みてえ」
「バカアホまぬけとんちんかん脳筋バカ石川」
「思いつく限りの悪口やめない!?てか意味が全部頭悪い系!」
「なんにしても幸らしくないぜ〜。いっつもなにかあってもさ、ここがダメだった!反省!はい次!って超〜立ち直りはえーの」
「………そうか?」
「そうそう。うわこいつ強え〜〜!って思ってたよ」
「いつ」
「出会った頃?あと現在進行形?」
そんなこともあったかもなあ〜なんて思いながら、
俺は一体なにを反省したらいいんだ。
そもそもなにをこんなに落ち込んでるのかよくわからん。
頭と胸の辺りにモヤがはられていて、気持ち悪いのに、それがどうしてなのかわからない。
「そんなに落ち込むなら、星野と仲直りすりゃいいじゃん」
「そもそも仲良くねえ!」
「じゃあこれから仲良くなればよくね!」
「なんでそうなる!?」
「そもそもなんでそんなに星野が嫌いなんだよ」
「え、」
一瞬、思考が固まる。
「そりゃ、質問攻めうぜえし、う、占いマニアだし、」
「それな〜ずっと不思議だったんだけど」
「なんだよ」
「いやな?幸が占い嫌いなんは知ってるよ?でもさ、相手が占い好きだからってそんなに人を嫌うような奴じゃないじゃん。お前」
「そ、れは」
「実際お前の母ちゃん占い好きだけど、お前はマザコンだし」
「マザコンではねえよ!!」
それは、そうかもしれない。
それこそ中学の時だって、女子が占い雑誌を読んでキャッキャッしているのを見て、そこまで嫌悪感を覚えたことがない。
なんなら星座とか聞かれてたら普通に答えていた。
ただ星野の時はそれを教えるのがどうにも嫌だったのだ。どうしてだ。
「水難の相があるよ」
「顔近い!」
「不破はここの耳のところホクロあるから努力家だけど頑固な人だね」
「触んな!」
「不破はおうし座でA型だから責任感が強いし、完璧主義者だからストレスたまってることあるかもマッサージしようか?」
「いらん!」
「不破、大丈夫?」
星野との今までのあれやこれを思い出してみた。
俺はあいつと2日の付き合いのはずだがやたらと思い出すと頭を抱えたくなる光景がフラッシュバックする。
あいつ!俺の話ばっかしてる!
「なに赤くなってんの?」
「あ!?なってねえよ!石川てめえ目までバカになったか!?ああ!?」
「やから!?」
「お待たせ〜。どうしたの?」
「ヨッシー!助けて!こーろーさーれーるー」
「あ、おかえり。ヨッシー。」
ヨッシーの登場により、危ない感情をなんとか踏みとどまらせる。
「雪村先生と話してたら遅くなっちゃった、お昼食べられるかな」
「5分あればいけるっしょ!」
「おめぇじゃねぇんだよ」
「雪村先生にわかんないとこ聞きにいくなんて、勉強熱心だなあヨッシー」
「え、えと、僕科学はどうにも苦手で…」
「科学なー!俺も!」
「お前は全教科苦手だろ」
「うん」
俺たちのクラスの担任で、オカルト同好会の顧問である雪村先生は科学担当の教師なのである。
なんで科学の先生が、オカルト同好会の顧問なんだよ…
「で、でも雪村先生教え方上手だからなんとか大丈夫そう」
「へえ。てか科学なら今度俺教えるよ。得意だし」
「えっ!?あ、いや、」
俺の申し出にちょっと困った感じのヨッシー
「あ、俺が、先生だと不安か、ごめん」
「ち、違うよ!?嬉しい!た、ただ雪村先生担任だし、顧問だし聞ける頻度高いから、あのその方が幸くんも楽だろうし」
「確かに、部活はまだ体験入部とはいえ、これからめちゃくちゃ雪村先生の顔見ることになるな俺ら」
「え、えへへ」
困ったように、でもなんだか嬉しそうに笑ってみせるヨッシー。
さっき俺が困らせたか、どことなく顔が赤いような気がする…?
「……いいなあ。同じ部活」
「まだ言うか、バスケ部」
「照くんバスケ部にも友達いるのに」
「いるけどさあ。こう?なに?三人の時間も大切にしたいというか…幸とヨッシーが一緒にいる時間が多いと俺が取り残されそうというか!!」
「寂しがり屋か」
「そんな照くんのこと、忘れたりしないよ。僕の怪談を笑って聞いてくれるの照くんだけなんだから」
「ヨッシー!!」
ヨッシーの怪談、
こないだの部活の後、途中まで一緒に帰ったので少し聞いたのだが怖かった…!
話もそうだが、ヨッシーの語り方がめちゃくちゃ上手かった!普段のふわふわした雰囲気とのギャップもありすぎて、怖さ倍増だった。
ヨッシーになにかが乗り移ったんじゃないかと不安になるレベルだ。
石川はバカだから聞けるんだろうな…。
…。星野は怪談平気なのかな。
ブンブン!
突然脈絡もなくやつの名前が脳裏に浮かんだので、
ひっぺがすため頭を左右にブンブン揺らした。
ほぼ反射的だった。
俺の突然の奇行に二人はどうしたどうしたと目をぱちくりさせている。
すまん。なんでもない。ちょっと虫もとい星野が…。
「そ、そういえば幸くん知ってる?」
「え?」
「今日のオカルト同好会の歓迎会…」
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