占いなんて大嫌いだ!

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「幸くんって、ほんとツイてないね」 昔、顔も覚えてないクラスメイトの女の子から言われた。 なにかとトラブルに見舞われる俺に呆れて、あるいは憐れんでかけてきた言葉だったと思う。 「ツイてないね」 「不幸体質ってやつ」 「お祓いとか行った方が」 「可哀想」 うるさい。うるさい。うるさい。 俺は不幸なんかじゃない。 ただ、たまたま面倒事に遭遇しやすいだけだ。 そんなの俺だけじゃない。 誰だってあることだろう。 なんとなく悪いことが続くなっていうことは。 「ようー!幸!相変わらず不幸だなあ、お前!」 「石川ころす」 「機嫌悪っっ!?」 昼休み。 俺の席にうるさい男がやってきた。 石川。 中学の頃のクラスメイトだ。 同じ高校に入学したのは知っていたが… 「中学でもうんざりなのに、高校でもお前なんかと同じクラスかよ」 「なんかとはなんだ!むしろそこは、ずっと学校に来れなくて不安だったけど、石川様がクラスにいてくれてよかった!!って思うところだろ!」 「登校してきた時は完全スルーだったろ!おまえ!」 あの凍りついた状態に、ちょっとでも声をかけてくれたらよかったのに。 お前はそれでもお調子者か。 「あんな格好で登場したお前になんて声かければよかったんだよ」 「おま、それは、あれだよ。場を和ませるような一言とかをだな」 「びしょ濡れ泥々で初登校してきたクラスメイトを前に和ませる一言ってなんだよ。あの状況で声かけたら俺までグルだと思われるわ」 「グルってなんだよ!」 別になにも企んでねぇよ! 「つうか、そう言いつつ真っ先に俺のところにきたな。お前まだクラスに友達いないの?」 「いるわ!お前と一緒にすんな!」 そう言うと、石川はぐるりと黒板あたりの席に体を向け 「ヨッシー!」と叫んだ。 黒板近く、前から2番目の席に座っていた男子がこちらに気付き、笑いながら手を振ってきた。 メガネをかけている大人しそうな男子だった。 俺は手を振ってきたヨッシー?さんに軽く会釈をし、 石川はぶんぶんと音がなりそうなくらい、手を振り返した後、また俺の方に向き直した。 「どうだ!」 「お前にしては、利高そうなお友達だ」 「だろ!」 「きっと優しい子なんだな…」 「おう!ヨッシーは優しいし、ホントいい子だぞ!それに…」 「だからお前の事も邪険にできずに…」 「そうそう!…っておい」 ヨッシー?さん大丈夫だろうか。 石川のテンションにうんざりしていないだろうか。 「そんなこと言ってると、ヨッシーにお前を紹介してやんないからな」 「すみませんでした。石川様がクラスメイトでよかったです。」 「急に!変わり身!」 せめて一人くらいは友達を作らねば…。 母さんを悲しませてしまう。 「あー、じゃあこれからヨッシーも誘ってさお昼といこうぜ」 「おう!石川様!」 「様はもういい」 「不破」 これから高校生らしく、友達とお弁当という青春イベントに胸を踊らせてるところに水を差すように、 俺の名前を呼ぶ悪魔の声がした。 星野だった。 「お昼…俺も一緒に」 「いやだ」 「お昼を食べながら生年月日と血液型、ついでに出生地を教えて…」 「黙れ」 星野。星野裕夜。 先刻のHRで友達第一号になってくれるかもという俺の淡い期待を打ち砕いた男。 占いマニアの男だ。 さっきの一件から、もう話しかけてこないだろうと思っていたし、俺にも悪いところはあったので、(急に怒鳴ったし)俺に占いの話をふっかけた件は忘れてそっとしておこうと思っていた。…思っていたのだが…。 この男!あのHRから執拗に隙あらば俺に 生年月日やら手相見せてやら言ってくる! 占いの話をしてくる! もちろん、占いの話はやめてくれとお願いした。 お願いしたさ、だが、 「不破、そのままにしておくのはよくない。ちゃんと自分の運勢の状態を知って、良くなる努力をしないと運勢ってものは上昇しないんだよ」 「うるせー!お前はどこぞの詐欺師か!宗教勧誘か!もっともらしいこと言っても俺は洗脳されないからな!」 「大丈夫。君はきっと治る」 「どこも悪くねぇんだわ!」 「こないだまでインフルだったけどな」 石川が余計なちゃちゃをいれる。やかましい。 「とにかく!何度も言うけど、俺に占いの話はすんな!そういうの信じてないし、嫌いなんだよ!」 「で、でも…」 「あ、あー、星野?なんていうか、こいつ本当にその手の話が苦手なんだよ。だからちょっと、な?」 「石川様…」 「様はいらんて」 「星野くーん」 「お昼食べよー!」 星野を呼ぶ声が聞こえてきた。 うちのクラスの中で既に上位にいるであろう女子グループだった。 「ほ、ほら〜。星野呼ばれてるぞ〜。」 「…」 「さっさといってこいよ。石川!お前は早く俺にヨッシーさんを紹介しろ!じゃあな、星野!」 「お、おう。ってヨッシーは俺と一番仲良いんだからな!?」 後ろから星野の「あ…」という 少し寂しげな声が聞こえた気がするが、振り向かなかった。
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