占いなんて大嫌いだ!

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「ここ?」 「うん」 駄弁りながら移動しているとはいえ、 オカルト研究同好会は結構俺達の教室から遠く、 やっと着いたなんて思ってしまうくらいの距離だった。 「…てか、随分学校の端というか、寂しいところにあるんだね」 「まぁ、同好会だから…」 確かに。部として認められていない部。もとい同好会なんてこんなものか。 あまりのひっそり具合にちょっと気分を下げかけたが、 確かにここなら俺でも入れそうな部活もとい同好会である。ヨッシーも一緒だし。 「失礼しま〜す。シャドウ先輩、今日は友達を連れてきましたよ〜」 そうこうしているうちに、ヨッシーが何度もきているのか手慣れた感じに部室のドアを開ける。 シャドウ?なんて? 「うわっ暗っ」 部室の中は真っ黒なカーテンで窓が覆われており、 夕方とは思えない、夜の暗闇のような暗さに包まれていた。 「シャドウ先輩〜?いますか〜?またどこかに隠れてるのかな」 だからシャドウてなに?外国人? 「あの、ヨッシー…」 「ふっふっふっ」 「うわ!?」 暗闇のどこからか、不気味な笑い声が聞こえてきた。 「同胞よ…連れてきたか。我らの新しい一部となるか…あるいは生贄となる愚かな子羊を」 「あ、シャドウ先輩お疲れ様です。どこにいます?」 「なんで普通に喋ってんの!ヨッシー!?」 俺からしたら、真っ暗闇の中、姿の見えない訳のわからない人が訳のわからないこといっていて、普通に怖い。 「ふ…今のままでは我の姿が見えぬか。仕方なかろう。人間共に合わせ、視認できる姿になってやる」 「人間共!?いやあんたはじゃあなんだよ!?」 ガタッ! 「うわ!」 暗闇の中でなにかが蠢く音がした。 ガタッ!ガタッガタ! 音は断続的に響き渡り、止む気配がない。 「なになになに!?」 ガタガタッガタ!ガタッガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ!!!! 「いやうるせえ!そしてしつけえ!!」 「先輩〜?早くでてきてください〜?」 「………少し待たれよ」 ガタッ!ガタッ! いつまでも鳴り止まない音が、段々と焦りを帯びてきたような物音に変わってくる。 というか、こんな狭い部室でガタガタしてたらいい加減音の正体がなんなのか、俺でもわかってくる。 さっきから部室にぽつんとあるロッカーがガタガタ動いているからだ。 「ちょ、これっどうなって…開かない…!」 シャドウ先輩とやらの余裕も完全になくなってきている。普通に喋れるじゃん。 「ふー、落ち着け僕。入れたんだから出ることも可能なはず。我の前においてこんなもの全然脅威では…ふんっ!」 いまだにロッカーはガタガタ蠢いているが、 扉が開く様子はない。 「………………同胞よ」 「はーい」 「ど、どうやらこの異界の扉は内側からでは開けられぬ。外側のロックを解除し開けてはくれまいか」 「はーい、待ってくださいね」 とうとう助けを求めてきた。 そうか、このロッカー異界の扉だったのか。 まぁロッカーなんだから鍵が外側にしかないのは当然だ。 なにかの拍子に鍵がかかってしまったのだろう。 久しぶりに俺より可哀想な人を見たなあ…。 そんなやつそうそういないんだけど。 ひどい話かもしれないが、これだけでもここにきた価値あったかもなあ。なんて思う。 「先輩、鍵開けましたよ〜」 先輩の失態を笑うこともせず、素直に鍵をあけてあげるヨッシー。まじ天使。 「うむ…」 苦虫を噛んだかのような声で返事をする先輩 「……?あれ?でてこないけど。ヨッシー鍵ちゃんと開いてる?」 「開いてるけど…あー、幸くんちょっと」 「え?」 ヨッシーがちょいと耳を貸してという風なジェスチャーしたので、ヨッシーの声に耳を傾ける。 「恥ずかしくて出てくるタイミング見失ってるから、そっぽ向いて見えないフリしよう」 「…」 ヨッシーまじ天使。 「あれー、暗くてなにも見えないなー先輩どこかなー」 「う、うんー。なにも見えないよ。今俺は部室の扉側を向いているから廊下の光しか目に届かないなー」 こんなんでいいんでしょうか…? バンっ! あ、でてきた。と後ろの気配でロッカーが開いたのを察知した。とりあえずでてこれてよかったですね。先輩。 「よいぞ。同胞、我はこっちだ」 先輩のお許しがでたので、ヨッシーと一緒に先輩がいるであろう方向を向く。 「よくぞここにたどり着いたな。同胞そして新しい子羊よ。我はここの番人シャドウ・アブソリュートだ」 「オカルト同好会の部長で、山田和泉先輩。あ、普段はシャドウ先輩って呼んであげてね」 「……ふっ、人間の言葉でいうとそうだ。通訳ご苦労」 ヨッシーの通訳が優秀すぎる。 てか名前結構普通だったな。 そしてもう分かってたけど厨ニ病だ。 真っ黒で長い髪を後ろで束ねて、眼帯をつけている。 ネイルもバッチリ黒で決まっていて、それ校則大丈夫?といった格好をした先輩だ。 それにしても、この先輩… 「えーと、はじめまして。一年の不破幸と言います。今日は体験入部をしにきました〜。一応…。」 「ふんっ、我が部に体験入部とは、体験…だけで済むといいのだがな…貴様覚悟はできておるか?」 「いえ、めっちゃ軽い気持ちです。入らない時は入らないです。」 「子羊よ、そう言っていられるのも…」 「ところで先輩、ちっちゃくてかわいいですね」 「あ」 姿を見た時から思っていたことを、褒め言葉のつもりで軽く言った瞬間、先輩の身体がビクッと震えたかと思えば動かなくなった。 「…………よ、吉川ぁ」 「あ、はい!」 ここで初お披露目、ヨッシーの苗字は吉川なのだ。 「なんだこの、こいつ、このぉ…」 やばい。気にされていたことだったらしい。 いやでもホントに素直にかわいいって思ったんです。 お目目もぱっちりだし、髪長いし…。 「あの、えと、これはね幸くん!先輩が人間に擬態した時の姿で、あの、、そう!まだ人間界に留まるためには完全にはなれないというか!どうしても小さくなるというか、その内大きくなりますからね!先輩」 ヨッシーのフォローで目頭が熱くなる。 ごめん、今度デリカシーについて勉強してくるよ…。 俺も人のこと言えなかったなあ…反省しよう。 「そ、そうなんですね!だからそんなこの世のものとは思えないかわっ、かっ、こよさをしてるんですね!す、すごいところきちゃったなあ〜〜」 とにかく俺も全力でヨッシーの設定に乗っかる。 何言ってんだろうとか冷静になったらいかん。 「………」 「ふ、ふん!まぁな。新参者には我の本質を見抜くことができなくて当然。気にしなくてもよいぞ」 「あ、わ、わぁ〜ありがとうございます…」 これは先輩がさっきの設定で納得したんだろうか。 俺が設定を信じ込んでいるんだと思われているのか。 どっちなんだろう…。場合によってはこの先輩との関わり方を考えなくてはならない。 「では、今日はお前は体験入部ということでいいんだな?」 「あ、はい」 「先輩〜、僕もまだ一応体験入部ですよ〜。」 「同胞よ。前にも言ったであろう。お前と我は同じだと」 え、ヨッシー厨ニ病なの? 「その内、お前は受け入れる時がくる…我を。お前自身を」 「…」 なんか含みがある言い方で気になるが、この状況でなにがですか?なんて聞けるはずもなく。 俺はスルーする。デリカシー大事。 「ということでだ、子羊。お前のカルマはなんだ?」 「カルマ…!?………てなに?」 「なんのオカルトが好き?ってこと」 なるほど。まじで優秀な通訳だな。ヨッシー。 でも、そうか。ここオカルト研究同好会だった。 「俺は…その、オカルトとかあんまわからないというか、むしろあんまり信じてない方なんですけど…」 「ふむ、ならばなぜ我が門を叩いた」 「あー、と、ちょっと失礼だったら申し訳ないんですけど、俺、とある理由で普通の部活から煙たがられるというか…だからそんな俺でも入れる部活ってないかなぁみたいな感じで……すみません…。」 言葉に起こしてみると、ホントに失礼だった。 入れる部活ありません!ここなら俺でも受け入れてくれそうだからきました!てことである。つまりは。 「…なるほど。よくわからんが、カルマはお前自身に宿っているということか」 「いや、多分カルマとかはないと思いますけど」 「よかろう!」 先輩はどこからか取り出した紙を俺に渡してきた。 「体験入部届だ。人間のルールに従うのは面倒だが、これに契約印を刻み、我が眷属に渡すといい」 「え、いいんですか?自分でいうのもなんですが、すごい適当というか、目的とか俺ないですけど…」 「言ったであろう。カルマはお前自身に宿っていると。それに目的ならば、恐らくできる」 「はぁ?」 言ってることは訳わかんないし、小さいけど、 なんか堂々としてて、先輩って感じするなこの人。 言ってることはホントわかんないけど。 「ね、むしろ歓迎してくれるって言ったでしょ」 「う、うん。部活の体験入部で邪険にされないのちょっとはじめてかも…う、うれしい」 俺のことを知らないので、当たり前なんだけど、 俺に対して眉ひとつ歪ませない先輩にちょっとした感動というか、希望を感じてしまっているかもしれない。 「ところで、眷属って誰?」 「あ、顧問の雪村先生」 先生を眷属って呼んじゃうんだ…。 ていうか雪村先生って、 「ウチの担任じゃん…。」
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