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ひなは泣きながら、鬼の肩を抱き、精いっぱい刀を押しつける。
すると、まるで子供のような細い声で、
「あ……ぁ………」
鬼は鳴いた。
「で……ぐ………ち……が……」
か細い、さびしい──
迷子のような声で。
「……や……っと………も……り……か…………ら…………」
ビュゥッ‼
突然、激しい竜巻が襲ってきた。玉砂利がザラッと音を立てながら乱れ飛び、体ごと持ち上げられて転がる。息ができない。何も見えない。このままどこか遠くへ吹き飛ばされてしまうのではないか。そう思うほどの強風であったが、また驚くほど唐突に、ぴたりと風はやんだ。
恐る恐る目を開ける。
鬼の姿はない。
ただ一振りの黒い刀が、乱れた白い玉石の中に埋もれているだけである。
「おひなちゃん!」
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