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呪われた花嫁 1
「ひな、おひな」
ヒュウヒュウと冷たい風が吹く中に、自分の名を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
ひなは野草の茎を折っていた手を止め、立ち上がって辺りを見た。痩せた木々がまばらに生えた小高い丘の斜面。見渡す限り人どころか、小さな動物や鳥の影さえも見えない。気のせいだったろうかと再び腰を下ろす。
もうすぐ夏に差し掛かろうという時節だが、風は驚くほど冷たく、今年はろくな山菜が見当たらない。それでも赤くかじかんだ手をせっせと動かし、食べられそうな草はなんでも摘んで籠に入れる。
――私にできるのは、これくらいしかないもの。
貧しい家で両親が待っている。今年、畑にはろくな実りがない。気が遠くなるほど長い冬はたくさんの雪と氷ばかり残し、ようやく訪れた春もいつになく涼しい。父は十日ほど前から風邪をこじらせ、母はその看病をしている。なんとか滋養になるものを食べさせなければならない。しかし、家にはもう食べるものが一つもない。
大きな畑を持つ村人なら、ある程度の蓄えもあるだろう。そこへ出向いて頭を下げ、無理を承知で施しを求める。そんなことさえできないのは、ひとえに自分のせいだ。
ひなは深くため息をついた。
それを思えば、冷たい風に体を震わせながら丘から丘へ、野草を摘んで回るのを苦しいなどとは思わない。いや、思えない。
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