呪われた花嫁 2

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「はい。この丘のふもとにあります、小さな村でございます」 「そこへは、どう行けばいい」 「このまま道をまっすぐ行かれまして、あすこに見える坂をぐるっと下りましたら、すぐでございます」 「そうか」  男はそっけなく言うと、するりと駕籠に乗りこんで戸を閉めた。男たちが担ぎ上げ、さくっ、さくっ、と静かな足音を響かせながら去っていくのを呆然と見送る。  ――あの方は、村へ……?  一体何の用事があるのだろう。  にわかに胸騒ぎがした。  何か悪いことが起きるのではないだろうか。あの余所者が、不吉なものを村へ運んでいくのではなかろうか。  なぜそう思ったかわからない。けれど、煮汁が沸き立つように喉元が熱くなり、早鐘がどくんどくんと音を立てて胸の内から押し寄せた。もう居てもたってもいられず、ひなは両親のいる村へ向かって駆けだそうとした。  が、すんでのところで思いとどまる。  腕の中の籠を覗けば、野草はまだ少しの量しか採れていない。これでは一人分の夕餉をこしらえるにも足りないだろう。病み衰えた父に、なんとしても食べるものを持ち帰らねば。そうでなければ帰るに帰れない。不安で落ち着かない胸を手で押さえ、ひなはすごすごとまばらな林の中へ戻った。  けれどもいっかな胸騒ぎは収まらない。  なぜだかとても、とても嫌な予感がする。  ――どうして?  赤い唇をきゅっと噛みしる。  これまで以上に悪いことなど、起ころうはずもないのに。
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