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呪われた花嫁 3
ひなは村一番の美しい娘だ。
その評判はひなが生まれたときから村中を騒がし、十を数えるころには近隣の村々や大きな里まで届いたのだという。
生まれは貧しい農家である。素朴な百姓然とした父母は、自分たちの間になぜこんな美しい娘が生まれたのか、戸惑い驚きながらも大いに喜んだ。我が娘ながらこんな器量よしは見たことがない。まるで天女だと、それは大切に育ていつくしんだ。
村人たちは美しい娘を一目見ようと毎日のようにやって来た。ひながまだ幼いころ、彼らが手土産に持ってくる野菜やら米やらが家の中にたくさんあった。「ひいちゃん」「ひなちゃん」ともてはやされ、お餅もお団子もよくもらった。すっかり口にすることのなくなったあの幸せな甘さを、ひなは今でもしっかりと覚えている。
思えば、幼い娘の気を引いて、いつかはうちの嫁御にという大人たちの思惑が餡と一緒にたっぷり詰まっていたのであろうが、所詮は子供。そんなことは関係ない。小さな口でぱくりと食べて、甘いおいしいありがとうと無邪気に笑えば、そのあどけなくも綺羅綺羅しい娘の笑顔に、大人たちのほうが甘いものでも含んだように口元をほころばせた。
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